沸き上がる感情の名は、
彼女に用があるらしい柳に着いていったのは少しでも彼女に会うため。

後は、柳の調べたあいつ、花井についての疑問を払拭するため。

まぁ俺にとっては前者が目的の大半を占めているわけだけど、柳な後者がそうらしい。

まぁ彼女に会えるなら何だっていい。
花井に対するあの嫌悪感なんて彼女に会えることに比べたらなんら気にならない。

俺はそう思った。いや、そう思っていた。


漸く昼休みが訪れ、彼女と再会を果たした。お詫びとして彼女にスイーツを奢った。それを一口咀嚼して彼女は切り出した。

そして会話は進む。柳が彼女を問いただすが、彼女は知らぬ顔だ。
知らなぬ存ぜぬの態度を見せる。

意外だったのは柳が言葉に詰まったところ。

悔しかったのは彼女の興味はきっと俺より柳の言う『あいつ』に向いているのだということ。


(気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らないっ!
あんな気味の悪い女が俺より小夜さんの興味を引いているなんて…!
俺たちの大事な部活を崩壊に近づかせている上に、小夜さんにまで気にかけられているなんて許せないよね。)

この間までは確かにあの女が花井が気味が悪かった。俺の感情を操っていたようで、得たいのしれない恐怖があった。

だからむやみに手は出さなかったが、もう無理だ、許せない。

姿が、存在が、何より彼女の興味を引いているという事実が許せない。

小夜さん、俺はあの女を使ってあなたを存分に楽しませよう。あなたがあの女に期待している以上の喜劇を見せよう。
利用できるものは全て利用して活用できる立場は全て活用して。

だからだからだから、その暁に、その瞳に、俺に対する興味を映して――…。



彼女が最後に残した笑顔にどうしようもなく戦慄する、高揚する、欲情、する。体が本能から歓喜に奮えているような、そんな感覚に陥る。

柳にも向けられているというのは気にくわないけれど、この際それぐらい我慢しよう。

けれど、その瞳を独り占めできるのなら、その笑顔が俺だけに向くのなら、俺は何だってしてみせよう。

たとえそれがどんなに残酷なことであったとしても。
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