04
「、なんでもお見通しと言ったところか。」

柳の目が微かに開かれまた閉じた。

「そんなんじゃないよ。ただ、この間あぁ言った手前呼び出されたんじゃあこう思うのが当然じゃないかな?
あれ、もしかして外れてる?」

「いや、あってるよ。君に用があったのは柳だ。」

幸村君が口をはさむ。

「良かった。で、どうだった?」

「俺は、まず得意分野としている情報から調べた。が、収穫は無かった。」

柳君の顔に苦々しい色がうつる。

「否、無い、という収穫があったと言うべきか。」

「へぇ?」

面白くなってきた。くーちゃんも確か言ってたなぁ。

「彼女の前の学校の情報から家族構成、出生に至るまで何ひとつ、だ。」

何だか中学生のしらべられる範囲を越えている気がしてならないがそこはあえてノータッチだ。

「気持ち悪いよね、まるで存在するはずの無いものが自分たちの中に入り込んでいるんだもん。」

もう15才なのにもん、とか使わないでほしい。可愛いじゃないか。

「でもそれを何で私に?」

「お前前俺にこう言った。『もし全てを知りたいのなら行動してみるといい。』と。」

あぁ、確かに言ったね。

「実際に俺は行動した。けれど分からなかった。お前はこうなることを予測した上で俺にこう言ったのではないのか?」

どういうことかな?

「お前はあいつのことを、あいつが何なのかを知っていて俺にあぁ言ったのではないのか?」

柳君の切れ長の目からでている剣呑な光がこちらに向けられる。

「さあ?私にはなんのことだかさっぱりだよ。あぁ言ったのだって、迷ってる人間にかける言葉としてはありきたりな言葉でしょ?」

多少確信を持って私に向かってきたみたいだけれど、まだ足りない。まだ、弱い。それぐらい言い訳はいくらでもつく。

「それに私にはあいつ、なんてふせられても誰のことか分からないし。もし仮に君の言う『あいつ』を知っていたとしても君以上にはきっと知り得ないよ。」

もっと確固たるもので挑んでもらわなければ、意味がない。ヒントはそこらじゅうに転がっているよ。

「けど、そうだね、チャンスをあげるよ。私が君を惑わせてしまった償いに。」

二人のまっすぐな視線が私を貫く。「もし、仮に、どうしても分からない事があったなら、一度だけ答えてあげるよ。何だっていい。好きなあの子のスリーサイズでも次のテストの内容でも、気になるあの子の情報でも。私の知りうる最大の情報をあげるよ。」

「やはり、お前は知って、」

「ただし!一回きりだよ。今それを使ってもいいの?」

柳君が黙りこむ。幸村君はさっきからずっと壁のはなに徹しているけれど。

「よく考えてお使い。」

にっこりと私は笑う。最大の優しさと期待、それから――…、

警告を込めて。
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