ささやかな戯れを
「じゃあここテストに出るから覚えとけよー。
はい、今日の授業終わり。」

1日の最後の授業は先生のやる気のない声で終わった。
幸村と遭遇したあの日から数日。なぜか幸村にやたらと絡まれること以外は何ら変化のない生活だ。あ、変化はまだあった。

ばちり、と目が合う。

そう、最近よく彼女、花井さんと目が合う否睨まれているのだ。一方的に。

おそらく幸村が自分にまるで興味をなくしたことと、彼が私を気にしていることから彼女は多大なる勘違いをしていると思われる。

(うーん…。彼女の味方の女の子はいないから大した被害はないだろうけど、視線がウザい…。)

なんだかここ数日で老けた気がする。主に疲労が原因で。

でも話を聞く限り彼女は気が強そうだから何かしらしてくるのは確かだろう。

「めんど(ぼそっ)」

「なんか言ったか?」

私が呟いた声によりにもよって丸井が反応した。

「何でもないよ。気のせいじゃない?」

これ以上面倒ごとを増やすのはごめんである。

「そうかー?
何かお前最近やつれてねぇ?大丈夫かよぃ?」

なぜ そ ん な に 私 を 観 察 し て い る 丸 井 ?!

(あぁー…花井さんからの視線がびしびし突き刺さってるよ。やつれてる原因になってるのは現在進行形で君だよ丸井…。)

ため息を無理矢理呑み込み笑顔をつくる。

「本当に大丈夫だから。心配しないで。(頼むからお前は花井さんの心配だけしてろ!いや、ほんとに!300円あげるからっ!)」

「…まぁ大丈夫ならいいけどよぃ。あんまり無理すんなよ!」

にかっとした丸井の可愛い笑顔が今は憎らしい。

「ありがとう。
ほら、早く掃除に行かないと怒られちゃうよ。」

「あ、やっべ!!じゃあな!」

私の表情筋が稼働率100%な気がするのは気のせいかな。

継続して送られてくる花井さんの視線から逃げるようにして私も自分の掃除場所に向かった。



「やっぱり邪魔だわ、夢月小夜」

ぼそりと呟かれた彼女の言葉を聞かずにー……
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