03
俺が彼女を夢月小夜さんを知ったのは中1の始めだった。知ると同時に、いや変かも知れないけど知るよりもはやく一目惚れをしていた、と言った方が的確かもしれない。

きっかけは些細なことだった。入学式の帰り道、桜を眺めていた彼女を見かけた。その横顔が、姿が、まるで女神のようだったんだ。
本当に桜が、花が好きなんだとすぐに理解できる慈愛の眼差しが凄艶だった。
そしてすぐにその眼差しを向けられたいと願っている自分を自覚した。
愛は涙のように目から生まれて胸に落ちる、と聞いた事があるけど、まさにその通りだと思った。


そして、3年間想い続けてきた彼女が、今、目の前にいる。

始めて彼女と話をした。最初はすごく緊張したが、気付いたら自分の感情を吐き出していた。
きっとあの、慈愛の眼差しが俺を見つめていたからだと思う。

誰にも言えなかった気持ちを話していた。

そして初めて会ったのにも関わらず、彼女は話を真摯に聞いてくれた上に俺の欲しかった言葉をくれた。神の子でもテニス部部長でもない“俺”を見てくれていた。
自分の体が歓喜に震えたのが分かった。

まだまだ彼女と話したかったけれど、病院にいるということは体調が悪いんだろう。

彼女の体が心配なため、引き留めることはしない。機会はこれからいくらでもつくろう。
今までためらっていたぶんまで沢山。

その為にはまずこの病気と向き合おう。そしてもう一度、今度は俺が彼女を支えられるぐらいに強くなってから。それから彼女に会ってまずは感謝を伝えようじゃないか。

彼女の後ろ姿を眺めながら決意を固めた。

しかしそこでふと気付いた。今までの自分はどうして、何で彼女のことを、彼女へのこの狂おしいまでの気持ちを忘れていたのだろうか。

少し考えて、俺は答えにたどり着いた。その瞬間凄まじいほどの違和感、否違和感というよりはむしろ嫌悪感と言った方がただしいような感情を感じたんだ…―。
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