![]() | 「げほっ…、はぁ。」 情けない。 そんな事を考えながら病院へ行く。せっかくの休日に風邪ひくなんてほんと情けない。前に放っておいて肺炎になったことがあるだけにちょっと放置できない。 「混んでいるのでしばらく時間がかかりますが大丈夫ですか?」 保険証を受付に提示すると看護師さんにそう告げられた。 「あーじゃそこら辺を散歩しててもいいですか?」 待ち合い室が苦手な私としては是非そうしたいのだけれど。 「はい、じゃあ順番になったら放送で呼ばせていただきますね。」 看護師さんは嫌な顔一つせずににこやかに許可をくれた。看護師の鏡である。 「あ、」 「?(、え何この展開。)」 病院の中庭的なところを歩いているとなんとびっくり、我が立海テニス部部長幸村君がいました。 「………。」 「………。」 きっ気まずい…!何で反応しておいて無言なの。何でほのかに顔赤いの。何なの君も風邪なの。 「………。」 「………。えーと幸村君、だよね?」 はい、耐えきれなくなった私負けたです。 「う、うん。君は夢月小夜さん、だよね?俺のことを知っててくれたんだよね?嬉しい…。」 何 故 名 前 を 知 っ て い る ん だ ! そ し て 何 故 顔 を 更 に 赤 ら め る ?! 「そりゃ幸村君有名だもん、知ってて当たり前だよ。こちらこそ幸村君に知っててもらってるなんて嬉しいよ。」 内心凄くつっこみたいのを我慢して当たり障りのない返答を返す。 「あ、や、その…っ あ…。そ、そういえば何で病院に…?」 また赤くなったと思ったら今度は心配そうな顔でこちらを見てくる。 忙しい人だなぁ。 「ただの風邪だよ。」 「え、大丈夫なの?」 「大丈夫だよ。わざわざ心配してくれてありがとう。優しいんだね。」 友だちでもない私の心配をわざわざするなんて案外彼はお人好しらしい。 「そ、そうなんだ、大したことないならよかったよ!」 まぁ彼がお人好しとかそんなことはどうでもいいんだ。私が知りたいのは―…… 「それよりは、幸村君はどうしたの?なんだか最近前とは違うように見えるけど…。」 「っ!」 ビンゴ。幸村君の顔色が変わる。きっとこれが彼がおかしい理由だ、。 何故か彼は私に好意的なようだし、上手くいけば聞き出せるかな。 言葉にとびきりの甘さと誘惑を込めて囁く私は悪魔のようだろうか。 「私は幸村君が凄く心配なんだ、最近無理をしてるようで…。 話して楽になれるなら、話してくれてもいいんだよ?私でよければ、だけど…。」 人が弱っているときは自分のことを見てくれている、心配してくれてる、そんな気持ちを与えればその人のガードは緩くなる。それはきっと彼のようにいつも部長として気を張っている人なら尚更。 「…実は、」 ね? back::next |