02
「ナニねぇ…。どうしてそんなことを?」

くーちゃんはおっとりとしているようで実は鋭い。例えば兎の皮を被った肉食獣のように―…。


「アレさぁ、変なの。」

「変?」

「私もね、立場上ねいろいろあるでしょ?だからアレの前にいた学校とかも調べたんだけど、でてこないの。」

「…へぇ。」

「というかでてこない、というよりね、まるで

・・・・・・・・・
存在そのものがない、
そんな感じなの。」

「ふふ、何だか不思議な子だね。」

「ねぇ、教えて。アレはなんなの?」

彼女の目には得体の知れないものへの気味悪さが溢れていた。

「くーちゃん悪いけどね私はその質問を解決してあげるだけの答えを持っていないんだ。」

「、そう。」

目の前でくーちゃんがしょげた。可愛い女の子のしょげ姿ほど心が痛むものはないよね。

「でもね、彼女について私に言える事がある。」

私のそんな声にくーちゃんがばっと顔をあげた。

「彼女はね私たちから見て確実に

・・
異物、だよ。」

「いぶつ……。」

こんな曖昧な言い方をすると、逆にくーちゃんの興味を引き出すかなとは思ったが、すぐにそれはないだろうと思い直す。
何故なら彼女は賢く、そして私のことをよく分かってる。つまり、私がいくら問い詰めてもこれだけしか言わないと恐らく理解しているだろうから。

「ありがとう、小夜ちゃん。それが分かれば私にとっては大満足だよ。」

「なら良かった。」

ほらね?

「それにしても私いっつも小夜ちゃんに助けてもらってばっかだぁ。」
急にくーちゃんは机に項垂れ、そんなことをいいながらこちらを見上げてきた。

「そんな事ないよ。私もくーちゃんの可愛さに癒されてるしね。」

「〜っ小夜ちゃん、そういうことをさらりと言わないでよ!」

「?私何か変なこと言った?」

「この天然タラシめっ」

顔の赤い彼女を不思議に思いながら、私はまだ残っていたティラミスを口に運ぶ。

「でもさ、私ほんとに小夜ちゃんに感謝してるんだからね?」

「友達なんだからこれぐらい当たり前だよ。」

「それでも!ほんっとーに感謝してる!だからね?もし小夜ちゃんに何かあったら私にたよってね!私小夜ちゃんの為なら私の持てる力全部利用しちゃうんだから!」

「それは、心強いね。そこまで私を思ってくれてありがとうくーちゃん。私とってもいい友達を持ったみたいだね。」

「これだって友達なんだから当たり前、なんだよ!」

少し照れくさそうに彼女が胸を張って言う。

(持てる力全部、か。ほんとに心強いね。だって彼女はテニス部ファンクラブ会長様だからね。)

私は最後の一口をパクりと口に含み、ティラミス独特の苦味と甘味を堪能した。
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