たんたかたん、
「小夜ちゃん。」

退屈な授業が終わり、次は何だったかと考えていると鈴を転がしたような声に自分の名前を呼ばれた。

「あれ、どうしたの?くーちゃん。」

声の方に顔を向けた私は小柄な溌剌とした可愛い女の子―杠琴音(ユズリハコトネ)の名を呼んだ。

「今日私とお昼御飯食べない?そうだなぁ…、カフェテリアとかで。」

「うん、いいよ。」

彼女に声を掛けられるというのは何度もあるけれど、こんな剣呑な彼女に誘われるのは初めてだ。あれ、剣呑の使い方違うかな?

(でも私に不利には転ばないだろうから何だか期待ができるかも、だね。)

また1つ、退屈な授業を乗りきる燃料ができた。



「で、何かあったの?何だかピリピリしてるよ?」

お昼、私立の特権とも言えるようなカフェテリアで目の前にくーちゃんの頼んだオムライスと私の頼んだティラミスを並べた机を前に私は話を切り出した。

「まぁ、何かあったんだけど…その前に!小夜ちゃん!!」

急に彼女が身を私の方へ乗り出す。

「な、なに…?」

「もしかしてお昼御飯それだけ?!」

目が血走ったくーちゃんが私の肩をがっと掴み私に迫る。

「そうだけど。」

「だめーっ!だめだよだめだめ!だから小夜ちゃんはそんなに折れそうなんだよ!!」

まさか私にダメ出しがくるとは思わなかった。てか折れそうって。

「いい?ちゃんと食べなきゃダメなんだよ!?大体それだけなんてカロリーも栄養も足りないし、小夜ちゃんが死んじゃう!」

死んじゃうってまた大袈裟な。大体お昼はあんまり入らないんだよ、と言おうとしたがきっと怒鳴られるのが関の山だろう、と私は口を接ぐんで甘んじてしばらくお説教を受けた。

「だいたい、ただでさえそんなに細いんだから、くどくどくど……!」

「分かった、ちゃんと食べるよ、食べます。だからそろそろ本題に入ろうか。」

放置すると、昼休み全部使ってお説教しそうな気配がしたから途中でとめて、本題を促した。

「ほんとに分かった?」

ただでさえ小柄な彼女が上目遣いなんてするもんだからとても可愛い。

「ほんとほんと。」

「じゃあ、本題に入るね?」まだ納得していない様ではあったが、彼女も時間を気にしたのかしぶしぶといった感じで本題をきり出した。

「って言っても、小夜ちゃんなら知ってるんじゃないかなぁって思っただけなんだけどね?

花井美羽ってナニ?」

彼女のアーモンド型の目が鋭利な光を浮かべた。
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