03

「、お前は……。」

固まったのは一瞬で彼は今言葉を選んでいるように見える。

「誤解しないで、君を馬鹿にしてるわけじゃないんだ。ただね、いろいろ聞いていると今のテニス部は、特にレギュラーらしいけれど、何だかおかしいらしいじゃないか。だからかな?と思ってね。」

更に続いた私の言葉に彼は少し眉を潜めた。話すかどうか思案しているのだろうか。

少しの沈黙の後漸く彼が口を開いた。

「、お前は、今のレギュラーを見てどう思う?」

せっかくぼかしてあげたのにわざわざピンポイントで指摘するとは。

「まぁいい状態ではないだろうね。強いて言うなら、堕落の一途を辿っているように見えるよ。君も分かっているのでしょう?」

さぁ聞かせて、君の考えを、立場を。

「やはり、か。俺もこのままではいけないと、思ってはいる。だが……。」

言葉に詰まる彼の顔にはなんとも言えない色が浮かんでいる。

「だが、変なんだ。心の何処かで原因を拒否しきれない自分がいる。だから…」

原因、とは花井さんととって間違いないだろう。

「だから、気持ちを整理するために今は傍観に徹している、かな?」

「!」

再び言葉に詰まった彼の代わりに言葉を発すると、彼の目が見開かれた。まぁ反応からして当たりらしい。

「ふふ、ごめんね?ひき止めてしまって。これ以上君を遅刻させるわけにはいかないから、私はもういくね。」

本を借りることはできなかったがいい収穫だ。これでだいたいの立場は把握できた。

「、待て!お前はどうして」

我に帰ったのか慌てた声が耳に入った。

「もし、」

私は彼が言いきる前に口を開く。まぁ何を言うのか気になるのだろう。

「………。」

彼も口を閉じた。

「もし、君が全てを知りたいのなら行動してみるといいよ。」

そう言いおいて返答は聞かずに図書館を後にした。

(拒否しきれない、か。)

予想通りますます面白くなっているようだ。今日のこの出会いも更なるスパイスになるといい、なんて考えて発破をかけてみたけれど、果たしてこれが好を奏すのかどうか。

(ま、結果が分からないっていうのもまた一興、だよね。)
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