02
「皆頑張ってね?」

少女は可愛らしく首を傾げ最大級の笑顔を自分の目の前の少年たちに向ける。

「当たり前だぜぃ!美羽は怪我するといけないからそこで座っとけよぃ。」

「丸井、美羽は俺を応援したんだよ?」

「ゆっ幸村くん!」

「喧嘩しないでよ!私は皆を応援してるから!」

「美羽さんは優しいですね。」

「うむ、他の女子たちにも見習ってほしいものだ。」

「もう、誉めたって何もでないんだからね?」

顔の整った少年たちに囲まれた女子はこれだ、これなのだと思う。これこそが私が求めていた、渇望していた理想の××だ、と。

でも、と少女は顔を少しは曇らせる。

(何でここに仁王と赤也がいないの?!仁王は私に依存して赤也は私にべったりになるのがセオリーでしょう?)

ぎりっと歯を食い縛る。
足りない、これだけじゃ足りない。少女の欲はじわりじわりと広がり、禍々しくなっていく。

彼女は、花井美羽は、目の奥にどろりとした闇色の欲望の火を灯した。




「お前はどう思う?」
「俺はよく分かんねーんだ。今の部の雰囲気は嫌だ。でもあいつを花井をどこか拒否しきれねぇ俺がいるんだ。」

「ふむ、お前もか…。今のところ完全に拒否を示しているのは仁王だけということになるな。」

部室で二人の男が話をしていた。

「でもよ、なんか気持ち悪いんだよ。なんだか俺の意志が勝手に決められてるみたいでよ…。」

「まぁ今はまだなんとも言えないということだ。今は、…とりあえず見ていることにしよう。」

二人は誰よりも周りを見ていた。1人は自分のデータというスタイルのために、もう1人は自分の苦労人というポジションの為に、部内の誰よりも、周りを見ていた、周りに気づいていた。
つまり―……周りと自分たちとの間の異変に気づいていた。


けれど、はっきりしない自身の感情のため動く事が躊躇われ、もう少し、もう少しだけ傍観者という立場にいることにしたのだった。
果たしてそれがいいことなのか、分からないけれど。
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