06-01  


「は、はじめまして!今日から1ヶ月、こちらで薬師を務めさせて頂きます、遥奈と申します。よ、よろしく、お願いします…!」

元親さんの船に揺られ、彼の領地らしい四国についた。船内で何人かに挨拶はしたものの、人前で喋る、というのはあまり得意ではない。
それでも、元親さんの部下の人々は優しく迎え入れてくれた。

「おい、野郎共!遥奈にはわざわざ来てもらってんだ!失礼なことはすんじゃねーぞ!」
「「「了解しました兄貴ー!!」」」

元親さんが声を張り上げると大勢の人が声をあげる。

「姉貴!!1ヶ月よろしくお願いします!」
「あ、姉貴?!」
「お、いいなそれ!
姉貴ーよろしくお願いします!」
「姉貴ー!」
「ふっ普通に呼び捨てで構いませんから…!」

急に姉貴なんて呼ばれてしまい、一瞬脳がフリーズしたが慌て呼び名を訂正する。

「まぁ呼びたいように呼ばせりゃいいじゃねぇか!姉貴、いいと思うぜ?」

話を聞いていたらしい元親さんがニヤリとした顔で話に入ってくる。

「元親さんまで!からかわないでくださいよ!」

そんな会話に周りから笑いが起こる。最初は海賊なんて言うから安易に四国行きを決定した自分を少し恨めしく思っていたが、いざ話してみると皆優しい人たちで少し安心した。

「あ、そうだ。元親さん、薬師の部屋に案内してもらってもいいですか?あと秀信さんにもついて来ていただけますか?」

秀信さんというのは例の薬師見習いさんだ。船内で腕を見せて貰ったが、元親さんが見習いと言うだけあって薬師としてはまだまだだった。

「おう、秀信!いくぞ!」




薬師部屋に着くと、以前の薬師さんの優秀さが分かった。部屋には沢山の書物が揃っている。薬の改良などを行っていたような後もある。
思っていたより書物が揃っているため1ヶ月あればぎりぎり間に合いそうだ。

「秀信さん、すぐにで悪いんですが、今から始めたいのですが大丈夫ですか?」
「あ、はい!大丈夫です!」
「良かった。
じゃあ元親さん、今から秀信さん借りますね。
あ、あと薬は船で何種類か作ったので御入り用でしたら声をかけてくださいね。」
「おう。しっかりしごいてやってくれよ?」
「兄貴?!」
「あは、了解です!しっかりと!」
「遥奈さんまで?!」

私たちのからかいに秀信さんが情けない声をあげる。秀信さんはへたれ属性なのでついついからかってしまうのだ。

「そんな情けない声あげないでくださいよ!
はい、まずは初歩の傷薬から!船内で教えたものを作ってみてください。」
「は、はい!」

秀信さんは慌てて座り、持っていた薬草の風呂敷をあけ調合を始めた。

「遥奈、いろいろわりぃな。」
「いえ、私が言い出した事でもありますし、大丈夫ですよ?」

申し訳なさそうな顔の元親さんににこりと笑いかける。

「けどよ、…」

それでも申し訳なさそうな顔をする元親さん。

「あ、なんなら美味しいもの食べさせてください!それでちゃらです!」
「、はっなんだそりゃ?分かった!とびきり旨いもん食べさせてやるよ!」

笑顔になった元親さんは私の頭をがしがしと、でもどこか優しく撫でた。
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