05-02  


「遥奈!会ってすぐだし、こんなこと言うのはおかしな話だが慶次の友達だ、悪い奴じゃねぇことは分かってっし、話してみて俺がお前を気に入った。」
「はぁ…」

話の意図が全く掴めないのはどういうことだろうか。最近こういう事が多い気がする。

「そこで、だ。突然だが遥奈。 四国にこねぇか?」
「………は?」

予想だにしなかった言葉に一瞬何の冗談かと疑うが、彼の真剣な目をみて本気だということが伝わる。

「あ、えっと…詳しくどういうことか聞かせていただきますか?」

とりあえず二人を中にあげ店内のお客さんを一通りさばいたあと、店を臨時休業にして二人にお茶を淹れながら話をきりだした。

「あぁ。それがよ、うちにも薬師がいたんだが、急に死んじまってよ。そいつの弟子がいたんだが、まだいかんせん見習いでとても一人で人を看られる腕じゃねぇんだ。」
「でも、それなら城下の人を雇えば宜しいのでは?」

そうなのだ。どこでも城下に薬師はいるはずだ。その人たちをスカウトすればなんら問題はないはずだ。

「や、それがな、俺は基本的に船で生活してんだ。さすがに船上の病や船酔いまでは城下の薬師は専門外らしくて…」

なるほど、確かに陸で生活している城下の薬師にはそんな知識必要ではない。

「そこで、慶次に相談したらお前のことを紹介されたんだ。膨大な知識があって腕の良い薬師がいるってな。遥奈!頼む、四国に来ちゃあくれねぇか?!」

元親さんが頭を下げた。

「…すいませんが、四国には行けません。」
「っ何でだよ?!」
「以前別の方に誘われた時も言ったのですが、ここの人たちは、親を亡くし独りきりだった私に優しく接してくださったのです。その恩を返すためにも、離れる訳にはいかないのです。」
「………。」

黙り込んでしまった元親さん。武将の頼みを断ったのだ、やはり怒られるだろうか。

「そんな理由があるんじゃあしゃあねぇな。」
「へ?」
「何間抜けな面してんだよ。もしかして切り捨てられるとでも思ったのか?」
「い、いや、そんなこと!」
「はは!顔に出やすいよ、お前。」
「う゛、そんなこと!」

否定したくても、既にバレバレのようなので否定しきれない。

「俺はこんななりしてっけどそこまで鬼じゃねぇよ!ま、残念だか今回は諦めるか…」

豪快な笑いを飛ばしたかと思うと、急に部下を思う武将の顔つきになる。そんな顔をしないでほしい。

「なぁ、遥奈〜なんとかならないのか?」

今まで黙っていた慶次さんが声を上げた。

「慶次、無理言うなよ。」

おまけに優しいときた。

「邪魔して悪かったな、遥奈。」
「あの!」
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