04-05
「じゃあお邪魔しました。」
「ついでに泊まっていけばいいのに。」
「いえ、薬や薬品の管理もあるので失礼します。今日はありがとうございました!」
もうすぐ夕刻になろうかという時間帯。やるべきことが終わった私は、花子を取りに行き帰ることにした。
「しかし、このような時間におなご1人は危険でござる!」
「大丈夫ですよ。私みたいなの襲う物好きもいないでしょうし!」
「そんなことないでござる!遥奈殿はかっ可憐なおなごで…っ」
幸村さんは顔を真っ赤にしながら私に迫った。
「あはは、お世辞でも嬉しいです。」
「お、お世辞などでは…!」
「もー旦那ってば情けない…でも旦那の言うとうりだよ。年頃の可愛い女の子がこんな時間に1人じゃ危ない。」
なんだか二人とも心配性だ。
「!そうでござる!佐助、遥奈殿を送ってさしあげろ!」
「へ?いいですよ、別に!私大丈夫です。」
「了解したよ旦那」
「佐助さん?!」
「もう、こんな時は甘えとけばいいの!それにわざわざ来てもらったのはこっちだし、ね?」
伺うようにこっちを見てくる佐助さん。それに幸村さんの視線もぐさぐさ刺さる。
「〜っ分かりました!」
「うむ!…遥奈殿!その…、今度店にお邪魔してもよろしいだろうか?」
別に我が家は店なのだからいつでも来てくれていいのだけれど、わざわざ確認する幸村さん。
「えぇ!それではお待ちしておりますね。」
「!そうでござるか!
それでは遥奈殿、また後日!佐助!ちゃんと送るのだぞ!」
「じゃあ遥奈ちゃん、行こうか。」
「はい。それでは幸村さん、さようなら!」
そうして私は幸村さんのお城をあとにした。
*
「それにしてもさ、いつの間に旦那のこと名前で呼ぶようになったの?」
「クッキーを持っていった時に、急に名前でいいと言われたので…。なんだか幸村さんってよくわからない人ですよね!」
改めて幸村さんの奇行を思い出すと、なんだかすこし面白い。
「へぇ、あの旦那がねぇ。ま、伝わって無さそうだけど。……あ!そうだ、あのくっきー美味しかったよ!」
佐助さんがぼそっと何かを呟いたが上手く聞き取れなかった。
「ありがとうございます!何だか佐助さんに言われると嬉しいです!なんか舌肥えてそうだし!」
「俺様どんな位置付けなの?!」
「ふふっ、秘密です!」
帰り道延々ととりとめのない話をしながら、私は家まで送ってもらった。何だか友達とのおしゃべりみたいでとても楽しかった。
「わざわざありがとうございました!」
「いえいえ、女の子送るぐらいどうってことないよ!」
「そうですか?…あ、少し待っててください。」
佐助さんを表に待たせて、私は店の奥にある物を取りにいった。
「これ、送ってくださったお礼にどうぞ。」
「何?これ。」
「私が改良に改良を重ねた傷薬です。忍って怪我多そうなので、どうぞ。」
「…ありがとね。大事に使うよ!」
「いえこちらこそ送ってくださってありがとうございました!」
芽生えた気持ち?
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