04-04  


「よし!かんせーい!」

焼きあがったクッキーを取り出して冷ます。少し冷めたらちゃんとクッキーらしい固さになった。試しに味見をしてみると、現代で作ったものには少し劣るが、この環境で出来たにしては上出来の味だった。

「佐助さーん!できたから、真田さんの居場所まで案内してくださーい!」

取り敢えず佐助さんに案内を頼むために声を張った。あんな広い城内、一回通ったぐらいで場所が覚えられる訳がない。

「はいよー。おっ、何だか美味しそうだね!」

「ありがとうございます!あ、こっちが普通のクッキーで、こっちが抹茶味です。あと、これが佐助さんの分です!」

「俺様の?」

「はい、もちろん!なんか真田さんに持っていくと全部食べちゃいそうじゃないですか。せっかく作ったんで佐助さんにも食べて貰いたくて!」

「っ!…あはーありがとね。」

「いえ、じゃあ持って行きましょう。」

佐助さん用に分けた包みを渡してから、後を着いていく。何だか覚えられそうにない気がするのは気のせいにした。決して私が賢くないとかそういうんじゃないから!





「着いたよ。…じゃあ俺様行くね。」

「はい、ありがとうございました。」

少し緊張しながら中に声をかけると、入ってきてくれと声が帰ってきた。

「失礼します。真田さん、出来上がったので持って来ました。どうぞ!こっちが普通のクッキーで、こっちが抹茶味です。」

「わ、わざわざ申し訳ない。頂くでござる!」

真田さんがクッキーに手を伸ばした。私が食べて大丈夫だったものの、やっぱり人に食べてもらうのは緊張してしまう。

「うまいでござるぅぅううう!」

口に入れた瞬間叫んだ真田さんにほっとする。真田さんは次々とクッキーに手を伸ばしていて、ちゃんと美味しかったんだと嬉しくなった。しかし、沢山作ったクッキーの半分ぐらいで真田さんが急に手を止めた。

「?あ、あの、やっぱり美味しくなかったですか…?」

「ちち違うで御座る!、その、遥奈殿は甘味を好きな男をどう思いまするか?」

唐突な質問に頭が追いつかず、すぐに言葉が出なかった。

「やはり、女々しいのだろうか…」

私の沈黙を悪いようにとったのか真田さんがしょんぼりとしたので、慌て言葉をつむいだ。

「いえ!食べ物の趣味なんて自由でいいと思いますよ、私は。辛いもの好きな人もいれば、下手物好きもいるんです。甘いもの好きな人がいてもおかしくないでしょう?
それに私は逆に嬉しいですよ、甘味好きな男性!自分の作ったもの美味しく食べてくれたら嬉しいですし、甘味好きなら一緒に甘味屋巡りもできそうですしね!」

「!っそう思うでござるか?!」

「ええ。」

下手物好きなんて我ながら例えに出すのはどうかと思ったが、何だか元気を取り戻したようなのでよしとしよう。
真田さんは残りのクッキーもにこにことしながらすべて平らげた。

「真田さんは美味しそうに食べてくださるので嬉しいです。」

「そ、そうでござるか…?」

「ええ!クッキーもとっても美味しそうに食べてくださってましたし!」

「遥奈殿!そ、その…某のことはぜひゆ、幸村、と…」

「え?」

「ゆ、幸村、と呼んでくだされ!」

「ゆ、幸村さん?」

「そうでござる!」

恐る恐る名前で呼んでみるとにこにことしながら肯定された。
相変わらず真田さ、幸村さんは良くわからない人だった。
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