03-03  


「……―でね、旦那ったらずんだ餅が食べたいから奥州まで行けなんて言うんだよ!?」
「そ、それはちょっとというかかなり人遣い荒いですね…」

佐助さんの愚痴を聞いて思ったことがある。真田幸村さん(さっき佐助さんに教えてもらった)どれだけ甘味を愛しちゃってるんだよっ!
さすがに酷いとしか言いようがない。佐助さんの気持ちも分かる。

「でしょ!?それで給料意外と安いんだからもう俺様切ない…。ん?何かいい匂いがするー。そういえばちょうど半刻だね。」
「出来たっぽいです。ちょっと待っててくださいね。」

台所へ行き窯を明けると、きれいに焼き上がったシフォンケーキがあった。

「よかったー。」

逆さまにして少し冷やしてから型からとりだして切り分けてからお皿にのせた。

「?何それ?何かすっごくいい匂いだけど…。」

やはり見たことがないのか興味津々な佐助さん。

「これはシフォンケーキという南蛮の甘味です。ちょうどお美代さんから牛乳と卵を頂いたので佐助さんの為に作ってみたんです。(とか言いつつ半分は自分のためだけどね。)」
「しふぉんけぇき?初めて聞く名前だね。って俺様の為に?」
「(平仮名発音可愛い……)はい。甘いものは疲れにいい、と言いますし少しは疲れが取れれば、と。」

木で頑張って作ったフォークでシフォンケーキを刺し自分の口に入れる。うん、上出来だ。

「遥奈ちゃん…!こんなことしてくれるの遥奈ちゃんだけだよ!(それに凄く癒される!)」

何か佐助さんが異様に感極まりながらシフォンケーキに手をのばした。

「うっわ!美味しいっ!!」
「本当ですか?よかったぁ…」

自分では美味しいと思っても佐助さんの口に合うだろうか、と少し不安だった私は「美味しい」と言われつい、いつも以上に顔が緩んでしまう。

「(か、かわい…って俺様何思ってんの!?)ほ、ほんとに美味しいよ!旦那にも食べさせてやりたいぐらいだよ(って俺様何言ってんの…?!)」
「あ、じゃあまだあるので持って帰ってあげてください。今包みますね。」
「う、うん。ありがとう。(俺様ほんと何言っちゃってんだよ…!旦那が興味持って遥奈ちゃんに会いたがるのなんて目に見えてんのに!あぁでも親切心で包んでくれてる遥奈ちゃんに要らないなんて言えないし…!)」
「……さん、佐助さん!」
「えっ?あぁ、どうしたの?」

なんだか上の空の佐助さんに何度も声をかけると、やっと気づいてくれた。

「これ、包めたのでどうぞ温かいうちに持っていってあげてください。」
「あぁ、うん…(はぁぁぁ…)」
「佐助さん?大丈夫ですか?」

なんだか黒いオーラを背負いはじめた佐助さん。そんなに帰るのが嫌なのだろうか。

「、遥奈ちゃんのお陰ですっごく元気だよ!今日はほんとありがとね!」
「あんまり無理なさらないでくださいね?」
「(あぁやっぱかわい…っじゃなくて)うん、分かったよ。ありがと。
じゃあまた来るね。(あー遥奈ちゃんに癒されてたい……!)」
back::next
back
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -