03-02  


「はい、じゃあこの草とこの草が5束づつなので、値段はこれだけになります。」
「………。」

普通に薬草を束ね代金を計算すると佐助さんが固まった。

「あの〜…どうかしましたか?」

おそるおそる佐助さんに声をかけてみる。

「………はぁ。ほーんとくる度に思うんだけど、なんで俺様もっと前からここの存在に気づかなかったんだよ…!」

すると、突然意味がよくわからないことを呟いて項垂れてしまった。

なんでもうちの薬草の値段は他の店に比べ格段に安い上に、かなり希少なものもあるらしい。相場とか全然分からないし、家の裏にいくらでも生えているから全然気づかなかった…!

「あれ、でも佐助さんぐらい優秀そうな忍さんならお給金結構もらってそうだから、それぐらい大丈夫なんじゃないですか?」

ふと思ったことを口に出してみると佐助さんが凄い形相で迫ってきて両肩をがしっと掴まれた。

「ほんとにそう思う!?」
「は、はい。思いますけど…」
「旦那に聞かせてやりたい…!」

…今度は泣き出した。突然どうしたんだろう。

「あの…?」
「俺様の主はねそりゃあもう大の甘味好きでね、その上人使いが荒いんだ!」

今度は急に遠い目をして語りだした。何だかよくわからないがとりあえず聞くことにする。

「忍務で疲れて帰ったと思ったらやれ団子買ってこいだの甘味を作れだのうるさいし、その上代金は俺様の自費…!酷い話だと思わないっ?!おかげで俺様忍なのに料理から洗濯から習得しちゃったし。………あれ、俺様ほんとに忍?」

何だか大変らしかった。

「いろいろお疲れ様です佐助さん。」
「そんなこと言ってくれるの遥奈ちゃんだけだよ〜。」

とりあえず慰めてみたが、よっぽど大変らしくなんだか切実だ。
(あ、そうだ!せっかくだし……)

「佐助さん、今から暇ですか?」
「えっ?まぁ一応余裕はあるけど…」
「なら良かった。ちょっと上がっていってください。」

佐助さんをねぎらってあげようと、何がなんだか理解してなさそうな彼を奥の自宅の方へ引っ張る。

「ここでちょっと待っててくださいね。」
「えっ!ちょっ、遥奈ちゃん?!」佐助さんの困惑の声を無視した私は時間をあまりかけられないからシフォンケーキにしよう、と調理を始めた。

なんとか生地が完成し、焼き上げるために窯に入れた後、佐助さんを待たせている部屋に戻った。

「あと半刻ぐらい待ってくださいね!」
「えっちょっ俺様全く状況が掴めないんだけど!しかもなんで半刻!?」
「ふふーそれは半刻後のお楽しみです。ほら、お茶も入れて来たし、愚痴も聞いてあげますから、ね?」
「んーしょうがないなぁ。」

口ではそう言うが、愚痴、のところで明らかに彼の目が輝いた。どれだけ溜まってるんだか。
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