02-04  



私の美しき剣、かすがから例の薬師が16歳の少女であることを知った。また同時に年など関係のないぐらい優秀な薬師であることも知り、その上柿崎の話を聞いた限りでも、とても心根の優しい少女だということが分かった。
興味が湧いた私は、優秀な薬師を確保するためその少女のもとへ行くことを決めた。



いざ会って見ると瞳の綺麗な少女であった。店の中を見る限りでも何十種類もの薬が取り揃えてあり私は改めて思う、我が軍に欲しいと。

しかし、彼女の返答は否。一国の主と忍を目の前に、殺されるやも知れぬこの状況で、恩のために越後には行かない。と迷いを浮かべることもなく言い切った。そして私の中にそんな彼女に深い尊敬にも似た感情が湧く。つまり、私が折れたのだ。

しかし彼女はこうも続けた。「一般の薬の援助をさせて欲しい。」と。

私は彼女の優しさが眩しかった。私が武人となる上でこの戦国乱世を生きる上で捨てざるを得なかったその感情をしっかりと持っている彼女が。そして同時に私の中に新しい感情が湧くのだ。
「この少女を護ってやりたい。」と。
戦国乱世から。この穢れたこの世から。




謙信様にお供して訪ねた「島崎屋」。
調べた限りいい話しかでてはこなかったが、一応私は警戒を緩めずにいたにめ関わらず、そこにいたのは可憐なただの少女であった。
それでも外見に騙されてはいけない、と気を張りながら店に入る。

しかし、そんな私へ彼女はあたりまえのように茶を出した。私が忍だと分かっているだろうのに。世間での忍の扱われ方も知っているだろうのに。
私を1人の人として見ているような彼女。
また、返答によっては殺されかねない状況で、恩の為に自分の命を省みなかった彼女。
この戦国乱世でなんて眩しい少女なんだろうか。こんな少女がこの先も生きていけるのであろうか。
そこで私ははたと気づいた。
(私は謙信様以外に、護りたい、という感情を抱いている、のか?)

彼女の家に泊まることとなった後も混乱していた。そんな私を通された部屋で寝ようとしている謙信様が呼んだ。

「ふふ、こんらんしているのですね、かすが。」

あぁ、この人は全て分かるのだろうか。

「…はい。」
「かのじょ、はるなはまことにふしぎなおなごですね。あってまもないわたしに、まもりたい、などとおもわせるなんて。」
「!」

謙信様も私と同じように感じたのだろうか。

「つるぎ。あなたはあなたのしたいようになさい。」

謙信様は全てを見透かした上で話をしているようだった。

「さ、もうよるもおそい。かすがもおやすみなさい。」
「はい。」



謙信様の部屋を失礼してから私は考える。
(こんなに混乱することになるなんて思ってもみなかったが、不思議と来なければ良かったなんて感情は微塵も感じない。)
思わず自分の考えている内容に失笑した。
(こんなことを考えている時点でもう答えは決まっているじゃないか。)

けれど、…謙信様にまでそう思われるなんて少しずるいから、もう少し答えを出さずにいようか…――
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