02-03  


「はっ?」

今この人なんて言った?一国の主がここに来た理由が私? なんで?

「今越後には薬師が不足している。私たち忍が補助をしているとはいえ少し厳しい。そこでお前の存在を知った。」

私の頭上のはてなマークに気づいたのか女の人が説明をしてくれた。

「はぁ。」
「よろしければ、えちごにまいりませんか?」

二人の視線が私に集まる。この人たちの言いたいことは分かった。確かに薬師事態あまり多くないようだから納得の理由だ。でも、


「申し訳ありません。私の身に余る程の申し入れではあるのですが、私はここを離れる訳にはいかないのです。」
「っ貴様!謙信様の申し入れをけるというのか?!」
「つるぎ、さがりなさい。…りゆうをきいても?」

殺気がひしひしと身に刺さるのがわかる。けれどだからといってひくわけにはいかないのだ。

「私は両親を亡くしております。しかし、そんな私が生きてこられたのはひとえにこの店の存在のおかげなのです。独りぼっちの私に常連様たちが良くしてくださったからなのです。ですから私はその恩を返すためにここを離れる訳にはいかないのです。
真に無礼なことだとは承知しております。しかし、私も譲れないのでございます。」

そうなのだ。1年前、独りぼっちになった私にお客さんたちはすごく良くしてくださった。お代を多めに握らしてくださったり、野菜を分けてくださったり、様子を見に来てくださったりと本当に良くしてもらった。
私が前の世界を割り切れた理由の1つは周りの人々の優しさなのだ。この意見を譲るわけにはいかない。じっと上杉謙信の目を見つめる。怯んだら負けだ。

「…………わかりました。」
「謙信様!」
「あなたのそのめをみればわかります。ころされるやもしれぬこのじょうきょうでじぶんのうけたおんのために、じぶんをつらぬく。なかなかできることではありません。
ふふ、どうやらわたくしのまけのようです。そなたのそのめにはかてるきがしない。」
「あ、ありがとうございます。(死亡フラグは回避したみたいだ!)」

「…………。」

しかしまだ女の人はこわい…!

「あ、あの申し入れはお断りさせていただきましたが、協力をさせていただけませんか?」
「というと?」
「さすがに患者を見て処方とまでは出来ませんが、傷薬や風邪薬、化膿止めや解熱剤などといった一般に必要なものを作らせていただけませんか?
これでも薬師のはしくれにございますので、苦しむ人の助けを少しでもさせていただけたら、と思いまして。」

反応が怖くて下げた頭をあげることができない。

「………。」
「………。」
「………あたまをおあげなさい。」

おそるおそる頭をあげると上杉謙信が女神の如く微笑んでいた。

「わたくしのめはやはりまちがってはいなかったようです。そなたはほんにやさしいおなごですね。こちらこそおねがいいたします。」
「あ、ありがとうございます…!」
「ふふ、おれいをいうのはこちらのほうです。ときに、そなたのなは?」
「島崎遥奈と申します。」
「そうですか。はるな、あなたのもうしで、かんしゃします。」

上杉謙信がこちらに頭を下げた。

「なっ頭を上げてください。私は当然のことを言っただけです!」
「ならわたくしもにんげんとしてあたりまえのことをしたまでです。
はるな、ほんとうにありがとうございます。」

綺麗な顔して頑固だこの人!

「〜っ分かりました。分かりましたから本当に頭をおあげください!」
「ふふ、ありがとう。
さて、つるぎ。そなたもいいかげんにらむのをやめてなまえぐらいいいなさい。」
「謙信様が剣、かすがだ。まぁその…よろしく頼む。」
「はいっ!(デレた…!)」収入源が増えました。

(ところでもう遅いので泊まっていかれますか?)(よろしいのですか?)(はい、かすがさんもそれでよろしいですか…?)(〜っどうしてもというなら泊まってやるっ!)
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