02-01  


あれから佐助さんがちょくちょく顔を出すようになった意外は特に変わったことはなかったが、ある日珍しいお客さんが訪ねてきた。

ガララララ

「こんにちは。」
「!いらっしゃいませーって柿崎のおじいさまじゃないですか!お久しぶりです!」

店の戸が開き入って来たのは白髪混じりの髪を上品に結わえた、初老の男性だった。名を柿崎利家といい元武将さんらしい。(今は息子の景家さんに家督を譲って隠居中だそうだ。)
越後からわざわざ通ってきてくださるありがたい常連さんでもあるのだ。

「今日はどのような薬をお買い求めで?」
「それが、情けない話息子が先の戦で怪我をしてしもうての。刀傷に効く薬を、と来たんじゃ。あいにく家の忍も忍務で空けておるから。」
「刀傷、ですか…そうですね、とりあえず化膿止めの薬と傷薬の湿布ぐらいでどうでしょう。」
「しっぷ?」

ああこの時代にはまだ無かったんだった。先日私が作り出した湿布(もどき)。
ぐりぐりと傷口に塗るのは痛そうだし、傷が深いとどうもなぁ、と改良に改良を重ね出来上がったものである。あくまでもどきであり粘着性はないけれど、そこら辺は包帯かさらしで固定してもらうことにする。

「はい、これを傷口の上にこちらを下にして広げてもらいまして、さらしなどで固定していただくのでございます。持続時間は1日程度にございますので、3、4日変え続けていただく必要はございますが、刀傷にはよく効くと思いますよ。」
「ほー。お主の店は真に興味深い物が多いのう。その上よく効くから不思議なもんじゃ。」
「ふふ、お褒めにあずかり光栄でございます。して、傷の大きさ、深さはどのぐらいでしょうか。」

会話を進めながら傷の様子を聞き出しそれで薬の量を決め、風呂敷に包む。

「さぁ、こちらを。」
「おぉ。申し訳ない。ほれ、お代じゃ。」
「では、丁度いただきます。またいらしてくださいまし。」



薬を買い家に帰り、女中に使い方を説明し早急に息子に手当てをさせた。

「入るぞ。」

「!っい」
「なに、そのままでよい。」
「申し訳ありませぬ。」

儂が部屋に入ると驚いて起き上がろうとする息子を止める。

「傷の具合はどうじゃ。」
「はい、痛みも不思議と和らぎすぐにでも治りそうな気さえいたします。」

(やはり、あのおなごは不思議なおなごじゃのう。)

「ほっほっならよかったわい。景家、今後はこのようなことのないよう、しっかり精進せい!」

「はっ!ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。」



「かすが、ただ今戻りました。」

「おつかれさまです、つるぎ。して、かげいえのきずのぐあいはいかがでしたか?」

私の今回の仕事は、怪我をした謙信様の家臣に薬を渡してくる、というものだった。
その家の忍がやればいいとも思ったが謙信様によればあいにく忍務にでているらしい。
(謙信様の手を煩わせるなんて!)といらいらしながらも向かった先で私は不思議なものを目にした。

「いえ、それがーー……」

私は柿崎の家で見たあの見たこともない薬と、その効き目などについて謙信様に詳しくお話した。

「ほう、それはすこしきょうみぶかいですね。
……つるぎ、かえってきてそうそうもうしわけありませんが、すこししらべていただけますか。」

「はっ!」
(謙信様に興味を持たれるなんてっ!徹底的に調べあげてやる!)
半ば八つ当たりのような感情を胸に、私はその場をあとにした。
back::next
back
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -