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真っ暗だった目の前がふっと明るくなった
―…おぎゃあ、おぎゃあ
「おめでとうございます、女の子ですよ」
*
死んだはずの自分が、生まれ変わってはや12年。苗字名前転生しました。何の因果か名字も名前も、挙げ句の果てには容姿まで前世と一緒。年々朧気になってはいるが、前世の記憶も全てある。以前と違うのは両親だけだ。
(でも…あの子を、 を殺した私にとってはどうでもいいことだ)
いくら朧気になってもあのことだけは覚えていたい、否覚えていなければならない。けれど、今はあの子の声が、顔が、笑顔が思い出せない。その事が私をどうしようもなくやるせなくさせる。どうして記憶は永遠であってはくれないのだろう。
「名前ー!制服届いたわよ!」
階下から今の母親の声が聞こえ、現実に戻される。
「はーい」
制服、というのは来週から私が中学生だからだ。中学生になったからといって私は生き方を変えるつもりはない
(私はこれからも嘘を吐いて、嘘を纏って生きていく。)
今の私が‘あの子’を忘れないための唯一の手段
青に溺れる深海魚
(人は声から人を忘れていくの)
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