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突然だけど、私には幼馴染みがいる。世間一般に想像されるような空気は微塵もないけれど、家族を越えたどこか安心できる存在、それが私の幼馴染みだ。

この世界に生まれて、もしかしたらあの子も、なんて淡い期待を抱かなかったわけじゃない。けれどいくら探してもあの子はいなくて、そんな中の二度目の人生はもう気がおかしくなりそうで苦しくて悲しくて、虚しかった。

そんな時、何にも言わずに傍にいてくれた。こんな奴ほっといて、子供らしい他の子と遊んだ方が楽しかったに違いないのに、気づいたら私の隣でいてくれた。一度だけ、私は聞いて見たことがあった、「私なんかといて、つまんなくないの?」と。でも彼は表情一つ変えず、こう言った。

「お前といる。」

そして私の手を握った。ただそれだけなのに彼がそうしてくれたとき、何故か少しだけだけれど心が機能した。

はじめて、この世界に求められた気がした。まだ私は前の私のままだけど、それでも今ここにいるのは彼が私をこの世界で認めてくれたから。もしかしたら、彼とあの子を重ねているのかもしれない。でもきっとそれでも彼はなにくわぬ顔をして私の傍にいてくれる。だから私は、彼にだけは本当の私をさらけだせるし、嘘も、…自分を守ることをしない。あの子を思って生きている私の唯一の安寧の場。



「名前ー!あっ君が来たわよ!」
「はーい、」

返事だけなのは、彼が勝手に部屋まで来てくれるから。
がちゃり
「久しぶり、仁。」

今日も幼馴染みには本来の自分を。
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