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亜久津 視点

俺の幼馴染みは小さい頃から泣かない奴だった。いや、泣かないというより泣くことを忘れてしまった、という方がいいかもしれない。
何故かガキの俺はその事が異様に嫌で、いつもあいつの、名前の傍にいた。今考えると馬鹿みてぇだが、傍にいれば名前が悲しまずにすむような気がしていたんだ。

いつも傍にいて(今考えるときめぇ)、しばらくした頃あいつが俺に聞いた。
「私なんかといてもつまんなくないの?」

その時の名前はいつにもまして消えてしまいそうで、俺は「お前といる。」と答えて、存在を確かめるように手を握った。すると、名前はアーモンド形の瞳を潤ませて初めて、泣いた。

俺はその時、初めてその瞳から出る雫を見た瞬間、自覚したんだ。俺はこいつが好きなんだ、と。だから悲しんで欲しくなかったし、甘えて欲しかったんだと思う。そして思ったんだ、こいつを…守ってやりたいと。

でもそれから俺にだけは本来のあいつを見せてくれている気がする。

未だにあいつの悲しみは知らねぇが、そんなのどうだっていい。ただあいつが俺がいることで少しでも安心できればいい。それだけだ。

ピエロの雫
(嘘つきの唯一偽りのない純粋な時間)(彼女は現実をほんの少しだけ受け入れ)(一つの雫をこぼした)
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