3

仁王 視点

面倒な授業をサボった俺は昼寝でもしようと屋上に来ていた。少ししていい感じに眠くなった時に、扉の開く音がした。

(誰じゃ、人がいい気分で昼寝しようとしとうのに)

入って来たのは後ろ姿しか分からなかったがセミロングの綺麗な黒髪の女だった。

女はしばらく景色を眺めたかと思うと歌いだした。

「Amazing Grace……〜♪」

俺でも知っている讃美歌だった。何度か聞いたことのある歌だったが、女が歌うのを聴いた瞬間、どくん、と俺の鼓動か高鳴る。

(何て綺麗で、悲しい歌なんじゃ…)

歌っている彼女は今にも消えそうで、俺は彼女の存在を確認したくて歌い終わった彼女に拍手を送った。俺に気づいた彼女の第一声は「雪みたい……」だった。また、どくん、と胸が鳴く。儚く穢れのないその白は誰より彼女に似合うと言うのに。

その後はっとした彼女はよく見ると、新入生代表のやつだった。何故か名前を呼んで欲しくて、でもそれを伝えるのもどこか恥ずかしく、ついふざけて「まーくんと呼んで欲しい」何て言ってしまった。
しかし彼女は天然なのかなんなのか疑問を持たずに少し首を傾け、「まーくん?」と言った。

(っ反則じゃろ、これは!!可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い……っ!)

彼女からの不思議そうな視線に気付き、慌て気を取り直し取り繕ったような質問をした。

しかし、その時彼女の顔にあまりに不似合いなにこりとした笑顔が張り付けられた気がした。
でも俺の勘違いかもしれないし、もしそうであったとしてもそれを聞けるほど親しくもない。
所詮彼女からすれば俺は、屋上で歌を聴かれた人であり、それ以上でも以下でもないのだ。
それでも、あの悲しい歌の理由が、張り付けられたような笑顔の理由が知りたくて、俺は彼女と親しくなろう、と決意を固めた。


(そして赦されることならば)(俺が彼女を幸せにしてあげたい)(なんて、)(おこかましいだろうか)
―――――――
title by狡兎
prev

list 
text(7/16) chapter(3/3)
×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -