星に願う

紹介


夕食の時間、私は広いバルコニーへ呼ばれた。何でもシンに仕えるこの国の守護神である八人将を紹介してくれるらしい。

「お、やっと来たな、ユナ!」
「お待たせしてすみません。」

シンの方へ行くと、小さな女の子から大きな男の人まで様々な民族であろう人たちがいた。

「なあに、時間はまだまだたっぷりある。ほら、シンドリアの守護神「八人将」を紹介しよう。
まずはジャーファルだ。普段は政務官だが、特殊な暗殺術の名手で強いんだ。」

ジャーファルさんとは出会ったときから数回会話を交わしているが、彼も八人将の1人だったのか。

「マスルールはかの戦闘民族「ファナリス」だ。とても強いんだ。」

黒髪の、目元が印象的な男の人がども、と頭を下げた。そして、次々と紹介される八人将の人々を私は必死に頭に叩きこんだ。人の名前を覚えるのは苦手だから。

「それにしてもユナちゃん、ヤムライハに弟子入りしたんだって?」

シンからの紹介が終わると、褐色の肌をしたタレ目がちな男の人がそう話し掛けてきた。彼は確か…

「シャル、ル…?」
「カンだ!ちゃんと覚えてくれよな!まぁ、好きなように呼んでくれ!」

シャルルカン、シャルルカンと心の中で何度か呟く。うん、多分覚えたかな。目の前で笑う彼は何だかとても明るい人だ。…女たらしそうではあるが。

「ユナ、そいつとしゃべると剣術バカがうつるわよ。」
「………なんだよ…」
「何よ…」
「え、あの、二人とも…?」

二人の間に険悪そうな雰囲気がたちこめる。もしかしなくても仲が悪いのだろうか?……私今間に挟まれてるんだけど。

「魔法使いってのはこれだから困るぜ…魔法しかできねぇ貧弱でエラそうな奴には剣と己の腕で高みへ昇る美しさがわからねぇ。剣こそが最強だ!」
「魔法こそが最強よ!
鉄の板キレ振り回して自分に酔えちゃう人種にはわからないでしょうがね……」

青筋を立てて静かに言い合いを始めた二人の間でおろおろしていると、ジャーファルさんが腕をひいて助けだしてくれた。
シンに至っては微笑ましそうに見守っている。

「いつものことなのですよ。まぁ喧嘩するほど仲が良いといいますか…」
「いつものこと、ですか…」

目の前の二人は髪を引っ張ったり頬をつねったりと何だか子どものような喧嘩をしている。見ようによっては仲が良さそうに見えないことも、ないかな?

「あはは、お互い素直じゃないからねぇ。」
「えぇと…ピスティ、さん?」
「あ、名前覚えてくれたんだ!呼び捨てでいいよ!こっちはスパルトスだよ!」
「よろしく。」
「よろしくお願いします。」

ピスティとスパルトスさんはあの二人とは違い仲が良いようだ。

「ユナちゃんはスパルトスと同じで綺麗な黒髪だね!」
「ありがとう。ピスティの髪も綺麗なブロンドだね!」
「えへへ、ありがと!
ユナちゃんって何歳なの?多分年近いよね!」
「私?私はえーと、今年で15だよ。」
「「「え」」」
「私の2才下なんだね!」
「え、ピスティって17なの?てっきり同い年くらいかと!っていうか…」

私が年齢を言えば、シンとジャーファルさん、そしてスパルトスさんまでもが声を洩らす。シンに至っては口をあんぐりと開いたままだからお酒が垂れている。何だ、見えないってか。

「3人とも何ですか。」
「い、いや、その、なぁ?」
「な、何で私にふるんですか。」

私が不機嫌になったのに気が付いたのかシンが不自然に話をスパルトスさんへふった。む、私よりピスティの方が見えないと思うんだけど。

「あまりにも貴女が落ち着いているのでもう少し年上かと思っていたのですよ。」
「……老けてるって言いたいんですか?」
「え、いっいや!そんなつもりは!」

ジャーファルさんがそうフォローを入れてくれるが私の傷を抉るだけである。私って老けてるのかな。でもアークはそんなこと言わなかったし…。

「もう!これだから男は!ユナちゃん、私と一緒にあっちでデザート食べよ?」
「うん!」

何故か私と同じくらい怒ったピスティがシンたちに向かってあっかんべーとしたあと私にそう笑いかける。年上にこんなこと思うのは失礼かもしれないけれど、そんな彼女はとても可愛かった。


bookmark
text(23/8) chapter(9/8)
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -