星に願う

とるべき手は


「シン!?」

ジャーファルさんの驚いたような声があがる。

「この国には沢山書物もあるし、様々な国出身の人間がいる。探せば君の情報が分かるかもしれない。」
「無視しないでください!」
「なんだジャーファル、お前はいたいけな彼女を危険にさらせというのか?あぁ!なんて酷い奴なんだ君は!」
「なっ」
「それに彼女は恩人だぞ?いつから君はそんな血も涙もない奴になってしまったんだ!」

二人のやり取りを聞きながらも私は思ってもみなかった彼の言葉に、間抜けな顔を晒していることだろう。

「それに、俺も君に興味があるんだ。勿論、食客として扱おう。どうだい?」
「え、と…」

答えに渋るも、悪い話じゃないはずだ。何よりあてもなく危険な旅をするよりは暫く一所に腰を据えて調べた方が恐らく賢明だろう。

「でも、迷惑じゃ…?」
「そんな訳あるか!なっジャーファル君!」
「……………はぁ。そうですね。」
「なっ?」
「……じゃあ、暫くの間、お世話になります。」
「よし!じゃあよろしくな、ユナ」

にかっと笑うシンドバッドさんになんだか不思議と安心感を覚えた。後ろでジャーファルさんも呆れたようにしながらも、微笑んでくれていた。




「ところで、君は何でシンドリアにいたんだい?」

あれから客間のような所に通された私はジャーファルさんが淹れてくれた紅茶を飲みながらシンドバッドさんと話をしていた。勿論ジャーファルさんもいれて。

「私、つい先ほどまで真っ白な部屋にいたんです。けれどアーク、私とずっと一緒に生活していた精霊?が、“時間だから”って私をそこから出してくれたんです。」
「アーク、とはもしかして真理と知恵を司るというあの伝説の精霊、でしょうか?」

ジャーファルさんがそう聞いてくるも、残念ながら私は詳しくは答えることが出来ない。彼は私に知識を与えてくれたけれど自分のことはあまり語らない人だったから。

「はい、たぶん。けれどあまり私も深くは知らないんです。アークはあまり自分について語りたがらなかったので。」
「そうなのか。…まぁ俺も今まで伝説だと思ってたんだ。謎が多くても仕方ないさ。」
「すいません。」
「いや、気しないでくれ。それにしても真っ白な部屋からということは、転送魔法か?それにしたって距離が問題にはならないのか?いや、興味深いな。」

シンドバッドさんがぶつぶつと呟き、考え出した。

「貴女はその真っ白な部屋で何をなさっていたのですか?」
「そんなにあらたまらないで下さい。私の方が年下ですし。」
「しかし、貴女は食客ですし、」
「なに、いいじゃないか、ジャーファル!ユナがそう望んでいるのだから!俺のことも気軽にシンと呼んでくれ。」

考えこんでいたはずのシンドバッドさんが急に話に入ってきた。

「いや、流石それは…」
「いいじゃないか!俺は君と仲良くなりたいんだ!」
「…、こうなったシンは面倒ですよ。」

ジャーファルさんが本当に面倒くさそうな顔でそう言う。きっと相当面倒くさいのだろう。

「じゃあ、シン…さんで」
「別に呼び捨てでも構わないんだが…」
「いくらなんでも突然出会ったおっさんを呼び捨てにできるわけないでしょう。」
「おっさん!?」

ジャーファルさんがさらりと吐いた言葉にシンさんがわなわなと震え、子犬のような目で私を見る。私は慌てて否定する。
「そういうわけではありませんよ!ただ偉い人を呼び捨てには…」
「なんだ、そんなことか!」
「そんなことって…」
「じゃあこの国の王としてではなく、俺個人として頼もう。気軽にシンと呼んでくれ!」
「、はい。」

なんだかこの人の太陽みたいな笑顔には逆らえない。ジャーファルさんもきっとこうして何度も押しきられてきたのだろう、後ろでやれやれと苦笑いしていた。

と、そこで部屋のドアが豪快に開いた。

「さっきの女の子が目覚めたって本当なの!?」

bookmark
text(23/6) chapter(9/6)
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -