星に願う

目覚め


「……………ん、…アーク…?」

目を覚ませば、真っ白な天井が目に入った。体はふかふかとした布団に沈んでいる。

「そっか、私、あの部屋から出たのか……」

さっきあったことを思い出していればがちゃりと扉の開く音がして、さっき私に話し掛けてきた男の人ともう1人知らない男の人が部屋に入ってきた。

「お、目が覚めたのか!急に倒れるから驚いたよ。体は大丈夫か?」
「あ、はい、急にすみません、」
「いや、気にするな!」

男の人は気さくな笑顔で私に話しかける。なんだか太陽みたいな人だと思うと同時に何故か懐かしいような感覚が私の中を走る。

「俺はシンドバッド。こっちはジャーファルだ。君の名前は?」
「ユナと言います。あの、ご迷惑おかけしました。」
「いや、国民を助けてもらったんだ。こちらこそ礼を言う。」
「いえ、そんな!勝手に私がやったことなので、」
「それでも救われたのは事実だよ。本当に感謝している。」
「そ、そんな…」

今私は恐らく偉いであろう人に頭を下げさせてしまっている。どうにか頭を上げて貰おうとわたわたしていると、助け船が出された。

「シン、彼女も困っていますからそろそろ頭をおあげください。」
「おぉ、そうか。」

彼の声で漸くシンドバッドさんは頭を上げたのでほっと一息ついた。そこで、ジャーファルと紹介された男性と目があった。

「貴女は何故我が国に?」
「え?」
「おい、ジャーファル!」
「シン、貴方はこの国の王なのです。この少女がわざと倒れたと考えられないわけでもありません。」
「彼女は恩人だぞ?」
「貴方はもう少しご自分の立場を理解してください。
もう一度聞きます、何故この国に?」

どうやら疑われているらしい。きっとここで名乗ることは簡単だ。旅人だとでも言ってすぐにこの国を出れば終わりだ。そう考えたときひやりとしたリングが手首で存在を主張する。


“もし普通に生きたければ生きることもできるのです、姫。”

アークの言葉が私の頭の中で甦る。きっと彼が言うことから推測するに、これを外してしまえば私は“普通”の生活は送れないのだろう。
するりとリングに彫られた不思議な文字をなぞる。


けれど、


「あの、すみません。その前に、これを外して貰えませんか。まだ体が上手く動かなくて。」

これを外さなければ、私は私を知ることが出来ないのだ。
私はシンドバッドさんにそうお願いした。これを外す事が出来る人は大丈夫だとアークも言っていた。もし彼が外すことが出来なければ、嘘でもなんでもつけばいいのだ。

「あぁ、分かった。」

彼の手がリングに触れる。心臓がどくりどくりと少し煩い。



かちゃり、と音がした。手首からそれが外れると同時に、彼の身につけている金属器の八芒星から目映い程の光が溢れた。

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