星に願う
出会い
「きゃあああああっ!」
つんざくような悲鳴で私は目を開いた。見たことのない街並みの中に私は立っている。ここがアークの言っていた混沌の世界なのだろうか?
「っあんなのは今まで見たことないぞ?!誰か早く王宮に伝令を!!」
「アリーナっ!」
「子供だ!子供が捕まったぞ!」
騒がしい方へと視線をやれば、巨大な生物が暴れていた。うねうねと動く手の中には小さな少女が捕らえられている。生物の口ががばりと開けられる。
「いや…っ!アリーナぁああっ!」
誰もが少女の悲惨な結末を予想しただろう、その時。私は手を、かざした。
ザシュッ ザシュッ ザシュンッ
「大丈夫?」
ドタンッ
生物は何か鋭いものに斬られ、轟音をたてながら地に臥せった。捕らえられていた少女はふよふよと私の元へと降りてきた。
「っうわああああん!」
「怖かったね、もう大丈夫だよ。」
「アリーナっ!」
余程怖かったのだろう、泣き出してしまった少女の頭を優しく撫でていると、母親らしき女性がこちらへ駆けてきた。
「私の娘を助けてくれてありがとう…っ!なんとお礼を言っていいのか…!」
「いえ、娘さんが無事で良かったです。」
「お゛がぁざん゛〜!」
泣きじゃくる少女を少しでも安心させるために母親へと渡す。すると、周りで見ていた民衆がわっと寄ってきた。
「お嬢ちゃん、すごいじゃねぇか!」
「俺もうアリーナが食われたかと思っちまったぜ!」
「お嬢ちゃん、魔導士かい?!」
「え、と…」
大勢に詰め寄られ混乱していると、遠くがさらに騒がしくなるのが聞こえた。
「おいおい、凄い騒ぎだな。」
「あれ、もう海獣いねぇじゃん。」
そしてそれはどんどんとこちらに近づいてくる。若い女性の色めき立つ声も聞こえる。
「きゃーシン様よ!」
「八人将の皆様もいらっしゃるわ!」
「これは一体どういうことに?」
「今、あそこの少女が女の子が海獣に食べられそうになったところを助けたんです。」
注目を集めている派手な集団の中の1番風格のある人が周りにそう訪ねると、1人の男性がそう言って私を指差した。集団の目が一斉に私へと向けられ、こちらへと近づいてきた。近づくにつれて私の本能に近い何かが私に囁く。彼は、私の求めるものを持っているのだと。すると私の前に立った彼が話し掛けてきた。
「君があれを倒してくれたのかい?」
「まぁ、一応、?」
「凄かったんですよ!なんてったってあれを一瞬で倒しちまったんだから!」
曖昧な返事を返す私に周りの人々が口々に詳細を口にする。
「我が国の民を助けてくれてありがとう。、っと、大丈夫か?!」
我が国、という言葉に王様かなにかなのかなと頭に浮かんだところで、私の意識は途切れた。
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