星に願う
囃子に溶けた声
「うぅ、ジャーファルさん!慰めて!」
あれからいくら否定しても無くならない女神様コールに私は泣きたくなった。ジャーファルさんが苦笑いを浮かべながら慰めてくれる。
「いいじゃねぇか!モテモテで!」
シャルルカンがそう言って笑うけど、全然よくない。
「目立ちたがりのシャルルカンと一緒にしないでよ!」
「あ?誰がなんだって?」
「シャルルカンが目立ちたがりだって!」
「んな可愛くないこと言うのはこの口かぁ?」
「うわ、酔っぱらい!」
シャルルカンが私の頬をつねろうとしてきたので避けると、どこからかやって来たヤムライハが加勢に入った。
「このやろっ」
「いいわユナ!もっと言ってやりなさい!」
「てめーヤムライハ!お前のせいでユナがお前みたいになってきたじゃねぇか!」
「あんたみたいな剣術バカに似るよりよっぽどましよ!」
「何だと!?」
「何よ!」
やっぱり始まった二人の争いに巻き込まれないよう私は端の方へ避難した。ジャーファルさんもいつものことなので仲裁にすら入らない。
「お!ユナ、楽しんでるか!」
後ろから陽気な声が聞こえて振り向けば、
「…うわぁ…」
膝に沢山の女の人を乗せたシンがいた。悪い大人の典型例がいるよ。
「いつものことだから気にするな。」
「ドラコーンさん。なんかシンってそのうち女の人に刺されそうですよね。」
「…あり得そうで笑えないな。」
何だか容易に想像できてしまい自分が言ったことながら苦笑いをこぼしてしまう。
「ドラコーンさんは結婚なさってるんですよね。」
確か美人な奥さんがいるとシンが言っていた気がする。
「あぁ。よく気が利いていい妻だ。」
柔らかく笑うドラコーンさんはきっと奥さんのこと愛してるんだろうな。何だか羨ましい。
「そんなことを聞いてくるなんてユナは結婚でもしたいのか?」
「っ!?」
「あぁ!俺の酒!」
ドラコーンさんのその言葉に、何かが落ちる音が聞こえた。そちらへ顔を向ければジャーファルさんが持っていた酒瓶を落としていた。シンが叫んでいる。しかし、ジャーファルさんはお構いなしにこちらへ歩いてきて私の両肩をがっと掴んだ。
「ユナ、」
「は、はい!」
「まさか、誰か好きな人がいるんですか?!はっ!ま、まさかシンですか!?ダメですよ、あんなの!」
「…はい?!いやいやいませんよ!」
「……そうなんですか?」
何だか真面目な表情をしてそう問いかけてきたジャーファルさんに慌てて否定する。ていうかシンをあんなのって。
「じゃあ何故結婚のことを?」
「あぁ、夢なんですよ。結婚してウェディングドレス着るの!」
「ふ、何だかお前らしい夢だな。」
「そうですか?まぁまだ相手はいませんけどね。」
「なら出会いを作ればいいんだよ!」
「わっピスティ!?」
「ほら、こっち!」
「わわ!待ってよ!」
ドラコーンさんとそんな話をしていると急にやって来たピスティが私の手を引っ張って、男の人たちのいる方へと向かう。
「別に今すぐじゃなくても……」
「駄目!さ、ほら!」
私の訴えは一蹴され、私は初対面の男の人と話すことになるのだった。
「ジャーファル、顔が怖いぞ。」
俺は眉間に皺を寄せて男を睨むジャーファルにそう声を掛けた。シャルルカンもそうだがこいつも存外分かりやすい。
「っ…そうですか?」
「お前もたまには自分のために動いてもいいと思うけどな。」
「、」
恋など興味がないのかと少し心配していたが、愛するものがきちんとできたようだ。しかも相手が彼女なら俺も安心だ、なんてたいして年も変わらないくせに父親みたいなことを考える。
「結婚はいいぞ。きっといい妻になる。」
「なっ?!別に私はユナをそんな風には!」
「俺は別にユナだなんて言ってないけどな?」
「〜〜っ」
墓穴をほったことに気がついたからなのか珍しく余裕のないジャーファルに俺はからかいすぎたかと反省しながらも、我が国の苦労人の想いが報われるよう願った。
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