星に願う

prologue


“ソロモンに愛されし姫よ
混乱と混沌の世界に、今――――”






「ねぇ、アーク。どうして、こんなものをつけなければいけないの?」

私の腕についている華奢な金色のリングをしゃらりと揺らす。よく手に馴染んでいるそれは美しいが同時に私を縛り付ける手枷のようだ。

“姫、それは貴女を守る「枷」。貴女は今から混沌の世界へと旅立つのです。また、それを外すことができる者は、かの組織の者ではないという証明にもなります。”

目の前にいる、今までずっと時間を共にしてきた彼は真剣な顔をして次々と言葉を紡ぐ。

“そして、それが外されるまではたとえ「マギ」であっても「貴女」の存在には気づかない。もし普通に生きたければ生きることもできるのです、姫。”

そっと彼の大きな手が私の手を包む。彼の手はこんなに寂しげだっただろうか?何故か今は彼が小さく見える。

“これは貴女を隠す「枷」でもあるのです。全ては貴女の御心のままに―――…”

彼はたくさんのことを教えてくれたけれど、決して私が何であるのか詳しいことは教えてくれなかった。時がくれば分かると…ルフが貴女を導くのですと、言うだけで。

“それでは、時間です。姫、世界は貴女がどんな選択をしようと貴女を受け入れるでしょう。”

どうか貴女の未来に幸多からんことを――…

そう祈るような彼の声を最後に、私の意識は途切れた。

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