星に願う
涙に染まる星
「シン……堕転、してるの…?」
シンが私に触れた瞬間、記憶が流れ込み私に全てを伝える。シンがはっと息を呑んだのが分かった。
「、まさか、力が目覚めた、のか?」
「ぁ、…ごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ!」
シンが恐る恐るそう口にした瞬間私はさっき自分が発した言葉を思い返した。
「わ、私っ見てしまって、かっ勝手に、全部…っ!それで、シンの感情も、覚悟も、確かに、知ったのに…!な、なのにあんなこと…っごめんなさい、シン、ごめんなさい…っ!」
彼の過去を勝手に見てしまった上に私はあんなことを言ってしまった。全て見たのに。それなのに彼を、どうしようもなく傷付けて、しまった。
「ユナ、顔をあげて」
「っごめんなさい、謝っても許されないのは分かってるけど…っ」
「ユナ!」
「っ、し、ん…」
突然ふわりと何かに包まれた。シンだ。私は彼に抱きしめられているのだ。
「ユナ。謝るな。確かに俺のしてきたことは誉められることではないのだから。」
「っ違う!だって貴方はいつだって…!」
続きを叫ぼうとしたところでぎゅうと抱き締められた。
「、ありがとう…、知ってくれたのが、君で良かったよ、ユナ」
私の肩に回るシンの腕が微かに、震えている。この人は、今までたくさんのものを犠牲にして、得て、彼の望まぬものに変わってしまった。
けれど、この人はそれでも進むしかないのだと、逃げることも完全に堕ちてしまうこともできるだろうのに、自ら沢山の責任を背負い込んで、それ故に卑劣ともいわれかねないことも沢山して。
善良な王など存在はしない。そんな人は王にはなれないだろうし、たとえなれたとしてもその国はすぐに滅ぶだろう。
しかし、それでも、世間的には悪とされかねない部分を知ってしまった今でも彼を嫌いにはなれないのは、そこに潜む苦悩や葛藤をも見てしまったからか。
全てを知ったのに、勝手に見てしまったのに、私はただ、彼の背に腕を回していつもより小さく見える彼を抱きしめ返すことしかできなかった。
こんなことを知るくらいなら。彼みたいな人を傷付けてしまうくらいなら。
こんな力、いらない。
私は“姫”なんかになりたくなんかない。
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