星に願う

綻びにキス


ヤムライハとの魔法の勉強も終わり、時間ができた私は黒秤塔の図書館へ来ていた。

「ん〜〜」

沢山の本の背表紙を見て、自分に関係のありそうなものを探す。

「……、」

と、そこでこの国のものではない言語で書かれた背表紙に目が留まった。あの文字は“白い部屋”で見たことのある文字だ。私は本棚がそれを抜き取り、近くの椅子に座り開いた。

知らない言語の筈なのに何故か慣れ親しんだ言語のように読める。

「、」

まるでそれは私の中に私の知らない“何か” が眠っているのだとでも言われているようで、つい読み進めるのを躊躇ってしまった。

「…これは、私?」

私がアークにもらったリングによく似たものが挿し絵に書かれている。その下には女性のような人の絵がある。私はそこに書かれた文章を読んだ。

『我らの大いなるソロモン王は、愛しき姫にあるものを送った。それは王が彼女の為に作った彼女を守る「枷」。何故なら彼女こそが、世界を変えうる「鍵」であったから。そうであるからこそソロモン王は自身の一部を愛しき姫に与えたのだ。そして、―――…』

そこから先は欠損が酷く読むことは出来なかったが、リングのついた左腕がなんだか重く感じた。

「(これが「枷」、?)」

私を守ってくれるというそれはどうしてそんな重々しい表現をされているのか。心の中で問いかけてみても答えてくれる人はどこにもいない。




あれから読み進めたもののあの本の中にそれらしい記述はなく、その上いくら探してもあの言語で書かれた本は他になかった。廊下を歩く足取りは、重い。

「どうして、アークはこれを持っていたの?しかもどうして私に…?」

始めに抱いていた謎は膨らむばかりで、私はいっこう萎んでくれそうにない。

「はぁ、」
「なんだぁ?辛気くせぇ溜め息なんか吐いて。」
「っ誰?」

突然後ろから聞こえた知らない声に振り向いて問い掛けると、暗闇を切り取ったかのような漆黒の長い髪の三編みを携えた、ルビーのような瞳を持つ青年がいた。

「誰、ねぇ…。んなこと聞かなくてもわかってんだろ?なぁ、“おヒメサマ”?」

目の前の青年を見ていると、初対面のはずなのに懐かしさを感じると同時に頭のどこかが警鐘を鳴らす。でも私は、確かに、知っている。だって、彼は、

「“マギ”…。」

私がそう口に出せば彼はさも愉快そうににやりと笑った。

bookmark
text(23/16) chapter(8/1)
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -