届かない


貴方が私を見る目はいつも優しい。目を合わせれば確かにその目には私が映っていて、その瞳の奥に愛を感じる。
けれど、それは親愛や、言うなれば妹に向けるような家族愛だ。

「ねぇ真ちゃん、好きだよ」
「ん?俺も好きだぜ?」

なのに、分かっているのに、期待する。まるで安っぽいメロドラマみたいな展開を夢見てる。
でも貴方は笑顔でとても残酷な言葉を吐く。


「なんてったって妹みたいなもんだからなぁ。」

でも、それでも良かった。側にいてくれるなら、何だって嬉しかったの。


「真ちゃん、卒業おめでとう!ってあれ?やけに部屋綺麗だね。めっずらしー」

今日高校の卒業式を迎えた幼なじみの部屋へ突入すれば、いつもとは違い綺麗な部屋が目に入る。私は少し、心臓が跳ねたのを無理やり気のせいにした。

「お前失礼だろ!まぁ、ありがとな。」
「そっかーでももう真ちゃんも卒業かぁ。」
「あーそーだな。つーかお前は?高校決まってんの?お前勉強あんましてなかったじゃねーか。」
「んふふ、なんと西高受かったんだよ!」
「はああああぁ?!お前そんな頭良かったのかよ?!」
西高と言うのは県で1、2を争う進学校だ。真ちゃんが目を見開いて驚いている。

「凄いでしょ!」
「すっげーよ!まじで!それに西校なら俺も安心だしな。」
「安心って?」
「西校なら変なやつあんまいねーだろ。お前すぐ悪いやつに引っ掛かりそうだしな。」

真ちゃんのその言葉に、ずきんと心が軋む。やっぱり、私は真ちゃんにとっては妹なんだ。中学に上がってから一杯努力したのに、幼なじみという壁と歳の差という壁はどうしても越えられないものらしい。

「、別に、真ちゃんが守ってくれればいいじゃん。」
「あーそうか、言ってなかったか。」

真ちゃんが頭をがしがし掻きながらそう言った。何故か嫌な予感がする。聞きたく、ない。


「俺な、」

やだ、言わないで。

「来週から―――」

聞きたくない。耳を塞いでしまいたい。

「東京に行くんだよ、漫画家になるために。」

――あぁ、もう傍にもいてくれないんだね。



(そうすれば、貴方の夢を笑顔で応援できるのに、)

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