差し出されたガラスの靴


「はぁ、またサボりか…。」

シンことこの国の王、シンドバッド。彼は確かに良い王だと思う。人には優しいし、強いし、今のバルバットの王より、はるかに王の器を持ってると思う。ただし、

「っまたこんなに書類を溜め込んで…っ!」

きちんと仕事さえすれば、の話だけれど。

「名前?」

「あ、ジャーファル…。また、やられちゃったよ。」

私と同じようにシンの仕事の怠け具合に頭を痛めているジャーファルが、私しかいない部屋を見て、頭を抱えた。

「っまたあの方は…!」

まぁ私は彼に比べればまだましな方だ。彼は旅にでるときも必ずシンの側近としてついて行かなければいけないわけだし。振り回されている度合いは私の何倍も高いのだろう。

「私にできる書類は片付けておくからさ、ジャーファルは一旦休憩取っていいよ。昨日から寝てないでしょ?」
「いいえ、大丈夫ですよ。」
「いやいや、休んだ方が良いって。ほら、シンを見習ってさ」
「はぁ、名前も私と似たようなものでしょう。女性がこんなに隈を作って…」

彼の少し冷たい指が私の目元をなぞる。

「ジャッジャーファル?!やっぱり疲れてるよね?!」
「いいえ、疲れてなんかいませんよ。
ずっと文句が言いたかったんです。貴女は頑張り過ぎる。その上、妙に無防備で…。いつ誰に取られるか気が気ではないんですよ。」

何か段々とジャーファルとの距離が近づいているような気が…。

「目をそらさないでください。」
「っ」
「名前、好「いやー!食べた食べた!」………。」

ジャーファルの顔が近づいて来て、もう無理だと目をつむった瞬間、シンが部屋に帰ってきた。

私は我に帰り慌ててジャーファルから離れる。

「ん?名前と…げ、ジャーファル…」


「王……。今日はこの書類全部仕上げるまでこの部屋から出しませんからね。」

「え、何でお前そんなに怒っているんだ?!
ん?名前、お前顔が赤いぞ、風邪か?」

「〜大丈夫です!し、仕事思い出したので失礼しますっ!」

私はシンにそう言われ、慌てて部屋を走り去った。


「どうしたんだ、あいつ?」

「無駄口はいいから早く仕事を片付けてください。」

「いたた!だから何でそんなに不機嫌なんだ?!」

差し出されたガラスの靴
(私、明日からジャーファルにどんな顔して会えばいいの?!)
(やっと言えると思ったのに…)


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