鳥籠の蝶


私は昔から体が弱かった。少し疲れれば熱が出ていたし、夏は1時間も外にいようものなら熱射病だ。その度に幼馴染みのテツ君が傍にいてくれて、ちっともめんどくさがらずにむしろ甲斐甲斐しく世話を焼いてくれた。幼い私はそれが嬉しくて、傍にいてくれるテツ君に軽く依存していたと言っても過言ではなかったと思う。
けど、私ももう高校生だから。ずっと甘えてばかりもいられない。そのうちきっと1人暮らしもするだろうし、私も1人で生きていかなくちゃならない時は近い。


「だからテツ君もわざわざ一緒に帰ってくれなくても大丈夫だよ?私ももう大人だし昔みたいには倒れないし、?」

ずっと私につき添ってくれていたテツ君からいい加減一人立ちしなきゃ。これからも傍にいてくれるなんて限らないんだから私も自分のことくらいもう自分でしなきゃって、そう、思ってた。

「…ま、んよ。」

「テツ、君?」

「許しませんよ、今さら僕から離れるなんて。」

「え…?」

目の前のこの人は、誰?いつも優しく微笑んでくれるテツ君は、一体何処に消えてしまったの?

「今まで、僕なしでは生きていけないようにどろどろに甘やかしてきたのに。今さら離れるなんて許しませんよ。」

見慣れた幼馴染みの顔が、怖い。暗く、淀んだ光を灯した目と視線がかち合った。

「それでも、僕から離れるというなら、今まで僕が貢いだ時間を返してください。」

ねぇ、名前。僕から離れるなんて許しませんよ。


かちり、首に見えない鎖が嵌まる、音がした。


鳥籠の蝶
(気づいた時には)(もう手遅れ。)

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