Love is  


アンバランスでそれでいて何処か妖しい魅力を放つ瞳を持った、目の前の彼が私に疑問を投げ掛ける。


「“恋と戦争においてはあらゆる戦術が許される”」

「…確か…フレッチャー、だった?」

赤司君が呟いた言葉についそう返した私は彼がそんなことを言うなんてとても意外だった。確かに彼らしい言葉のチョイスではあるけれど。

「よく知っているね。」

関心したように赤司君は微笑みながらそう言った。

「有名だしね。
赤司君はあらゆる戦術を使ってでも自分のものにしたい女の子がいるの?」

だから、少しからかったつもりだったのに。

「あぁ。」

あまりにも真剣な瞳でそう返すから、言葉に詰まってしまう。そこまで彼に思われている、女の子がいるんだ。名前も顔も知らない女の子が酷く、羨ましい。

「、そうなんだ。」

「……けど、その子を前にするとどうも上手く行かなくてね。どうすればいいと思う?」

そんなの私に聞かないで。今、貴方のその瞳に映っているのは確かに私なのに、どうしようもなく悲しい。

「別に、戦術なんていらないよ。…ただ、真っ直ぐ伝えてくれればそれだけで、嬉しいの。」

それでも答えてしまうのは惚れた弱みなのだろうか。やばい、泣いちゃうかも…。

「…そうか。」

赤司君は、その私の知らない女の子に、真っ直ぐ気持ちを伝えてしまうのだろうか。答えた癖にほんと、私って馬鹿だ。

「名前、」

「ん?上手くいくといいね、その子と!」

でもそんなのを顔に出すのはやっぱり私の変なプライドが許さなくて、頑張って笑顔を作る。
それでも真っ直ぐ彼の顔を見ることは、できない。

さりげなく窓の外へと視線を泳がせていると不意に腕を引かれ、驚いて顔をあげれば、視線がかち合った。

(この瞳も、きっとその子を見つめるんだろうな。)
ふとそんなことを考えていると、彼の口が言葉を紡ごうと開いた。そして、紡がれた言葉に私の頭は真っ白になる。



「好きだ。君が他に誰を思っていようと、誰にも渡すつもりなんかない。」




「、う、そ…」

「俺が嘘をつくとでも?」

その問いかけに首を横に振る。さっき頑張って引っ込めた筈の涙が、倍になって溢れる。

「名前、俺のものになれ。」

きっと私の気持ち何か気づいているはずなのに、私の口から言わせようとする赤司君はやっぱり意地悪だ。

「赤司君のものに、して」

私がそう言うと、赤司君は満足そうに優しく笑って私の唇を塞いだ。


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