敵わない


こっちには目もくれず雑誌を読んでいる姿に何だか雑誌に負けたような気がしてムカつく。

んだよ、せっかく時間つくってやったのに雑誌ばっか見やがって。破くぞ、それ。


「芭唐。」

じっと眺めていると視線に気付いたのか名前が顔を上げた。俺の顔を見てくすりと笑う。

「もしかして寂しかった?」

「はぁ?!んなわけねーだろ!!」

そんな余裕な笑顔を浮かべるこいつに心ん中見透かされてるみてぇで、だせぇ。

「ごめんね?久しぶりに芭唐に会ったからさ、何だか、その……恥ずかしくて…。」

そんないらいらもこいつのこの一言で吹っ飛ぶ。何だか振り回されてるようで悔しいが、それでも自然とにやける顔はどうかしてる。

「んだよそれ。」

でもやっぱり目の前でほんのり頬を染めるこいつを可愛いだなんて思う俺はもう本当にどうしようもねぇ。

「うー…芭唐がかっこいいのが悪いの!私ばっかどきどきしてるしー…」

と、そこまで言って自分の失言に気付いたのかわたわたしだす名前。

「俺だって余裕なんかねーよ、だっせぇけど。」

だからか知んねーけど俺の口がそんな言葉を発する。名前が一瞬目を見開いてから柔らかく笑った。



「私たち、似た者同士だったんだね。」

「…うるせーよ、」

俺は照れ隠しのようにそう言って、目の前の馬鹿みたいに愛しい女から雑誌を奪って、代わりに口を塞いだ。

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