シュガートラップ


「名前、髪の毛跳ねてる。」

「え、嘘?」

辰也にそう言われ、慌て髪を触ると辰也はその手をやんわりと掴んだ。

「直してあげるよ。
ほら、おいで?」

そう手招きをしながら柔らかく微笑む辰也は付き合う前よりも拍車をかけて私を甘やかす。それはもう砂糖よりも甘いんじゃないかってぐらいに。

「ついでに髪の毛も結おうか。どんな髪型がいい?」

辰也の大きな手が髪をすき、優しい手つきで髪が整えられていくのが分かる。

「辰也、最近私のこと甘やかしすぎだよー?」

このままだと辰也なしじゃ何も出来ないだめ人間になりそうで、とりあえずちょっと甘やかさないで、と訴えてみる。

「んー…無理かな?」

しかし、そんな訴えも人畜無害そうな笑顔の辰也に拒否される。

「へ?」

まさか笑顔でそんなこと言われると思っていなかった私はつい間抜けな声が出てしまった。

「出来た。ポニーテールも可愛いね。」

呆けている私に辰也はそう続ける。言われて見れば、首もとがすーすーする。

「あ、ありがとう?
いや、というか、無理って…」
「俺好きな子は思いっきり甘やかしたいタイプなんだよね。」

にっこり、そんな効果音が付きそうなぐらいの笑顔を浮かべながら、私の結われた髪の毛先をくるくると指に巻つける。

「!」

いつもより近くに彼の顔があって、私は自分の顔に熱が集まるのを感じた。

「ちゃんと責任も取ってあげるから、ね?」

そんな声が聞こえたかと思うとちゅっと可愛らしい音がした。

唇にほのかな熱が残る。

「〜〜〜?!」

思わず口をばっと押さえてしまう。

「相変わらず初だなぁ。」

まぁ、そんなところも可愛いくて好きだよ。


そう言って笑う彼に、私は混乱する頭の片隅で、そのうち糖尿病になっちゃうかも、なんてありもしないことを考えた。

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