純愛さながら


夕飯の後の食器を片付けていた私の背中にぐりぐりと鼻が押し付けられる。

「イワンくん?どうしたの?」

「…………」

私にぎゅっと抱きついたままイワンくんは答えない。私は取り敢えず、片付けていたお皿を一端机に置き、イワンくんと向き合った。

「さすがに私、読心術はできないかな?」

「………名前は、やっぱり、その、」

「ん?なーに?」

「背が、…背が高い方が好きなの?」


その、バーナビーさんみたいな、とアメジストのような瞳を潤ませたイワンくんが尋ねてきた。

「………ふふ、」

何だかそんなイワンくんが可愛くて、つい笑ってしまった。でも聞こえていなかったのかイワンくんは続ける。

「ぼ、ぼくヘタレだし、見切れてるし、その上、小さいから…」

「ふふふ、」

先ほどより大きな声が出てしまい、イワンくんが不思議そうな顔でこちらを見てくる。

「私はね、イワンくんだから好きになったんだよ。小さくたって、見切れてたって私にとってはバーナビーさんよりかっこいいヒーローなんだから!」

「本当に…?」「うん!だからそんな顔しないで?」

私がそう言ってくすくすと笑うとイワンは太陽のように笑って今度は正面から抱きついてきた。

(それにしても何で身長?)(ブルーローズが、自分より10cmは高くないと論外だ、って。)(それであんなに気にしてたの?)(うん…、でも名前が気にしていないならもういいんだっ!)((何だか犬みたいだなぁ。))

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