01


「お前まだ告白してなかったんか?相変わらずヘタレやなぁ。」
「うっさいわ、柔兄!俺には俺のタイミングがあんねん!」
「そう言うたかて、はよ伝えな誰かにとられてしまうんちゃうんか、あないに可愛い子。」
「っ分かっとるわ!にやにやすんな!」

そんな会話をつい聞いたのは昨日の昼だ。立ち聞きする気なんてなかったが、想い人が兄弟と話していて気にならない女の子がいるのだろうか。




「(聞かなきゃ良かった。)…はぁ、」

憂鬱な気持ちを引き摺ったままなので書類を整理する手も捗らない。

「なぁに辛気臭い溜め息吐いてんのや。」
「いたっ!なにすんねん!」

頭を後ろから叩かれ、後ろを振り向くと全ての根源である金造がいた。

「なんやねん、人の顔見て固まりよって。なんや、俺に惚れたんか?」
「、あほ、雰囲気イケメンの癖にうっさいわ。」
思わず息がつまった。きっと金造は好きな子にはこんな冗談言わない。そう考えると、泣きたくなる。

「はぁ?!せっかく人が元気付けてやっとんのに、可愛ない女やな!」
「っ、」

分かってるよ、自分が可愛くないことぐらい。きっと貴方の好きな人はこんなこと言わない可愛い女の子なんでしょう。

「、何や、ほんまにいけるんか?」

何時もなら言い返す私が何も言わないことで、金造は少し心配気な顔をして私に問いかける。でも今はそんな優しささえも、痛い。

「っ私ちょっと飲み物買ってくる。」

泣き顔なんて見せたくなくて私は金造の顔も見ずに事務室をでた。





「ぅ、ふぅ…ぐすっ」

事務室を出て、歩いていると涙が溢れる。

「ぅう、…」

誰ともすれ違わないのは不幸中の幸いだろうか。

どうしてこんなに涙が出るのだろう。

「名字さん?」

つい、俯いていると声をかけられた。涙を慌て拭い顔を上げる。

「はい、どないぞしましたか?」
「いや…。!もしかして泣いて、ました?」
「へ?や、目に埃がはいってもうて!」
「あ、そうなんですか。」

振り向くとそこにいたのは同僚の少し遊びなれていそうな男の人だった。私の苦しい言い訳を信じてくれているようでほっとした。

「心配かけてしもうてすんません。それで、どないしたんですか?」
「あ、その、もし今夜暇なら食事でもどうでs「悪いなぁ、こいつ今日の夜は俺と過ごすんや。他あたりぃ。」っそうですか…!で、では、失礼します。」

私を引き寄せ、金造が彼の言葉を遮った。彼は金造の言葉に慌てて去っていった。

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