未来なんてない | ナノ
見えない白線

「ふふ、何だか最近よく会うね。」

前会った日から2日後。俺はまた、偶々見かけた白雪を…百合を追いかけて屋上へ来た。本人は追いかけられているなんてしらないようじゃが。

「まぁ俺もよくサボるけん、今まで会わんかった事が不思議なくらいぜよ。」

これはこの間から不思議に思っていたことだ。頻繁に屋上に来ていた俺が何故一回も会わなかったんじゃ。

「あぁ、私今までは図書室でいたからね」

彼女のその言葉にそりゃ会わないわけだ、と納得した。しかし、それなら何故屋上に変えたのだろう。おかしなことに彼女といると何故か彼女のことを知りたがる自分がいる。

「何で屋上に変えたん?」

俺のその問いかけに、彼女はきょとんとした。

「どしたん?」

「ううん、仁王くんでも私に興味持つんだな、って。」

この間も告白紛いのことをしたにも関わらず全然自覚しておらん。まるで俺が告白した自分と、今の“自分”は別だとでも言っているようじゃ。

「ふふ、そんなに難しい顔しないで。嬉しかったんだよ。」

「別にしとらんよ。」

嘘、嬉しいなんて思っとらんじゃろ?いくら百合が掴みづらいっていってもそれぐらいは分かるんじゃ。

でも俺にそれを言葉にする勇気は、ない。


「で、何で屋上に変えたか、だっけ」

「おん、そうぜよ」

「うーん、そうだなぁ…。仁王くんは何で屋上へ?」

「…質問を質問で返すのはいけないことなり。」

まるではぐらかすかのような彼女に、つい低いトーンで言葉が出る。しかし、彼女はそれすら歯牙にも掛けず笑う。

「あぁ、ごめんね。
んーそうだなぁ。しいて言うなら、うん、とけちゃいたいから、かな。」

「とける?」

「そう。このまま空にとけて、消えちゃいたいの。」

そう言って瞼を伏せた彼女の頬に睫毛が陰を落とす。それがあまりにも儚げで今すぐにでも現実になってしまいそうで。

「、消えるって…」

彼女の存在が、空気が、真剣味を帯びすぎていて言葉がつまる。

「ふふ、冗談だよ、冗談!ただ日差しも緩んできたから、外でサボりたかったの!」

そう無邪気に笑った彼女だが、俺にはどうしてもさっきの言葉が本音に聞こえてうまく笑えんかった。


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