存在を確かめたい
「今日はこないんか。」
屋上でサボっていても、いつまでたっても彼女の来る気配すらしない。いつもなら居心地の良い屋上が酷く味気ないのは気のせいか。
「…つまらんの。」
「あれ、お前がこの時間にいるなんて珍しいじゃん。」
「気分じゃ気分。」
酷く味気ない屋上にいる気はおこらず、教室で久しぶりに3時間連続で授業を受けていると、昼休みにブンちゃんがそう話しかけてきた。
「つーか、お前昼飯は?」
「腹へっとらん。」
「またかよ!お前、いい加減体に悪いぞ」
「んー」
「んだよ…お前今日変だな。」
「…気のせいじゃろ」
こういう時だけブンちゃんは変に勘がいいからこまるのう。
「…あー、もしかして、百合か?」
ブンちゃんの言葉に、つい肩を揺らしてしまった。は、詐欺師も形無しぜよ。
「………はぁ、お前、ほんとに本気なんだな。」
「、おん。自分でもびっくりしとる。」
本当に以前の自分では考えられない。たった1人いないだけで、こうも気持ちを掻き乱され翻弄されている。
「ほんま、ありえん…」
こんなに会いたいなんて、顔を見たいだなんて、恋というものはとことん厄介なものらしい。
目の前でブンちゃんがなんともいえないような顔で笑う。なんじゃ、そんな顔出来るんか、そんな大人みたいな、顔を。
「俺が話してやれる話じゃねぇ。けど、もう反対はしねぇよ。」
「、」
「あのお前がそんなんなるなんてなぁ。」
「失礼ぜよ。」
「ほんとのことだろい。」
ふっと笑う顔は見たこともないような、大人の顔だ。なんじゃ、俺が気づいていないだけで、皆どこかしら成長しているのか。俺だけ、進むのが大人になるのを嫌がって、だらしなかっただけで。
「それにしても何でブンちゃんは百合がおらんて知っとったんじゃ?」
「それは、お前が知るべきだ。あいつに対して本気なら本気なだけ、お前が自分で知っていくべきよい。」
「、おん。」
やはりどうやら、このままではいられないらしい。いい加減臆病者では、いられない。