高校に入って1番始めに仲良くなった真白ちゃんは不思議な子だ。
あのキセキの世代の緑間をみーちゃんと呼ぶし、部内で1番怖い宮地先輩に気に入られているし。
(おまけにマネージャー業も完璧…まぁこれは当たり前か。)
あの帝光でマネージャーをやっていただけあって彼女の仕事は無駄がない。
(けど、あれくらいで雑誌に取り上げられるのか?)
疑問を抱いた俺は緑間に聞いてみた。
「なぁ、真ちゃん。」
「そう呼ぶなと何度言えばわかるんだ。」
「真白ちゃんって何であんなに取り上げられてたん?や、確かにすげーけどさ。」
呆れたような顔をした真ちゃんは俺の言葉を聞くと、俺の方を見た。
「あいつの本業はマネ業ではなかったのだよ。言うなれば、ほぼキセキ専用のトレーナーのようなものだ。」
「キセキ専用のトレーナー?」
「あぁ。あいつは一目で人のフィジカルが把握できる。そして観察すればするほど、対象者の限界値やウィークポイントまで全て把握できる。」
「は?」
緑間の口からどんどん出てくる言葉は耳から入るものの理解が追い付かない。一目でフィジカルが把握できる?観察すれば限界値も弱点も分かる?マジかよ。
「俺たちキセキは才能に体がついていかない。 だからあいつが限界値を測り、本気を出す時間の長さからトレーニングまで決めていたのだよ。そしてそれがあったからこそ、俺たちは中学時代故障もなければ怪我もなかった。」
……そりゃあ、雑誌にあれだけ取り上げられるくらいだから凄いんだろうとは思ってたけど凄すぎだわ、マジ。
「…スケールでかすぎだわ……。ってあり?でもさ、真ちゃん。」
「今度は何なのだよ。」
「じゃあ何で真白ちゃんはキセキの奴らと同じとこ行かなかったの? 結果的に真ちゃんがいっけど、知らなかったじゃん。誰も誘わなかったの?」
そうだ。そこまで凄かったなら何故彼女は高校もキセキと同じところを選ばなかったのだろう。もしかして、仲悪かったとか?や、でも真ちゃんとは仲良いみたいだし。普通に良い子だし、そりゃねーか。
と、そこまで考えたところで真ちゃんは口を開いた。
「いや、勿論誘われていたのだよ。キャプテンともう1人のマネージャーからは特に。勿論、他の奴らも1回はあいつを誘っている。」
「じゃあ、何で…」
「あいつはキセキを管理していたが故に、責任を感じている。フィジカルだけではなく、時にはメンタルもケアしていたから尚更な。」
「は?責任?何かしたの?」
「いや、何もしていない。少なくとも俺は、いや俺たちはそう思ってる。しかし、あいつはそうは思っていない。だからその責任に縛られて、誰にも進学先を言わなかった。」
真ちゃんの言っていることが抽象的過ぎて全く分からない。
「ちょ、真ちゃん。抽象的過ぎてわかんねーんだけど」
「俺からはこれ以上言えないのだよ。気になるなら本人に聞け。」
んなこと聞けるか! 思わず叫びそうになったが、きっと真ちゃんは真白ちゃんが大切だから全て話さないのだろう。勝手に話してあの子が傷つかないように。
でもさ、俺だって高校で1番初めに仲良くなったわけで。そりゃまだ2ヶ月ぐれーしか一緒にいないけど、大事な友達なわけだ。
つまり、俺はもっと真白ちゃんと仲良くなる必要があるってことか。大事な友達が頼ってくれるように。いつも笑顔でいてくれるように。
なぁんか“友達”はしっくりこない気がするのはまだ俺の気のせいってことで。
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