「どうしたんだ?んなとこ突っ立って。」
いつもの厳しい練習の後、汗だくのアンダーを替えてから自主練しようと思い、着替えてからもう一度体育館に戻った俺は中に入れないでいた。
「宮地さん、やっぱ真ちゃんが正しいみたいっすわ、」
「はぁ?」
俺の言葉に怪訝そうに顔を歪めた宮地さんに、俺は体育館の中を指差した。そこには、スリーポイントの打ち合いをしている2人。――…ただしスリーのラインよりもっと遠い所から。
「…まじかよ、」
「………」
互いに5本ずつシュートを打つも二人とも外れるどころかリングにかすることすらしない。体育館にはシュパ、シュパ、という音が響くばかりだ。
「、帝光ってやっぱこえー…」
俺はあんな所からシュート打ってあんな風に全部決まんねぇよ。まぁ真ちゃんはまだ分かるぜ?あれはもう俺にとって見慣れた光景になりつつあっからさ。 でも何で女の子の真白ちゃんがあんなに入るわけ?しかも全然外れねぇし身体もぶれねぇ。
「すっげフォーム綺麗だな…」
あの毒舌の宮地さんでさえ無意識にそんな感嘆を洩らすくらいに彼女のフォームは美しい。どこまでも基礎に忠実で、それなのに自然体で無駄の無い洗練されたシュートフォームはきっとプロにも劣らないだろう。
そんなことを考えている間にもアホみたいに決まるシュート。邪魔するわけにもいかず、なんだか体育館に入れない俺は宮地さんに問い掛けてみた。
「宮地さん、どっちが勝つと思いますか?」
「あ?そうだな、やっぱ緑間じゃねぇの?」
返答はちょっと意外だった。てっきり真白ちゃんって言うと思ったんだけどな。
「つか、あいつら二人の癖にあんなにコート使うとか何様だよ、おい。 後でぜってぇ轢く!」
毒を吐きながらも、あの二人の勝負が気になるのかなんなのか。宮地さんもまた体育館に入ろうとはしなかった。
「やっぱあの雑誌も嘘じゃなかったんすねー そりゃ雑誌にも載るわ、これ。」
「あいつはすげぇ必死に弁解してたけどな。」
雑誌の弁解に必死な真白ちゃんを思いだし、少し噴き出してしまう。わたわたと両手を振り涙目でからかわれてるだけだと懸命に主張してたっけな。
俺はもう一度二人に視線を向けた。
(それがあれと同一人物なんだから、信じらんねぇよな。)
彼女はどうやら思っている以上に沢山の側面を持っているらしい。そして、きっと真ちゃんはそれを俺よりも知ってる。
(別に中学一緒だから仕方ないんだろーけど、なーんか納得いかねぇよな。)
この間彼女を知ると決意したばっかりだが、更にその決意が強くなった気がした。
「あ、真ちゃん外した」
「ラッキーアイテムにつられるとかアホかあいつは」
宮地さんが隣で呆れたように笑った。
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