「みーちゃん!ヘルプ!」
テスト週間に入った日、私は数学のテキストとノートを持ってみーちゃんのところへ行った。
「はぁ、やっぱりか。」
みーちゃんは分かりきっていたようで、呆れたように溜め息を吐いた。まぁ中学の頃から毎回みーちゃんに教えてもらってたから分からない方があり得ないんだけど。 でも私だって少しは成長したのだよ。
「何もただでって言うんじゃないよ!ほら、手間賃!」
私はそう言って後ろ手に持っていたあるものを取り出した。予想通りみーちゃんはそれに反応し私の手から受け取った。
「1時間ぐらいなら見てやるのだよ。」
そっぽを向いてそう言いながら私の渡したそれ、おしること書かれた缶を開けたみーちゃんはやっぱりツンデレだと思う。
「へへ、交渉成立だね!」
「そこ、xの不等号は反転するのだよ」
「ん、あほんとだ。………よし、あってる!」
あれからみーちゃんはみっちり教えてくれた。
「そういうケアレスミスさえ気を付ければ大丈夫だろう。」
「うん ありがとね、みーちゃん!これで赤点は回避できるよ!」
「…あいつは大丈夫なのか?」
「ん?…あぁ、高尾のこと? 珍しいね、みーちゃんが人のこと心配するなんて。」
「あいつも今度試合でスタメンらしいからなのだよ。馬鹿が原因でチームに迷惑をかけるなど、話にならないからな。」
口ではそう言っているけれど、少し、本当に少しだけみーちゃんは変わった気がする。まだよくわからないけど、多分いい方に。
「大丈夫だよ!不安なのは英語だけらしいから、教える約束したしねー」
「そうか、お前が英語を教えるのなら大丈夫そうだな。」
「……………」
「なんなのだよ?」
「みーちゃんが、デレた!え、高校入学と同時にデレ期にでも入った?」
先ほどの発言で素直に私が英語をできると誉めたことになったみーちゃんは、それに気づいたのか顔を少し赤く染めた。
「なっ…意味が分からないのだよ!そんなわけないだろう!」
「え〜あるよー!ね、もう一回さっきの台詞言って!録音してきーちゃんに送るから」
「言うわけないだろう! ほらさっさと帰るのだよ!」
「うえー?せっかく可愛かったのにー」
「おおお男に可愛いなんて言うものではないのだよ!」
からかいに素直に顔を赤くして焦る辺りは変わってないなぁ、なんて思いながらも私は後できーちゃんにみーちゃんのデレ期突入を教えてあげようと密かに思った。
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