01
「失礼いたします、元就さま、用とはなんでございましょう?…あら、佐助さん?」

元就さまが呼んでいると女中に聞いたので部屋を訪ねると、武田軍の忍がいた。

「あはー茜ちゃん久しぶり。」
「猿め、茜が汚れる。見るでないわ。」
「えぇ、ちょっと名前呼んだだけで酷くない?!」
「口を開くな、むしろ酸素を吸うな。減る。」
「流石の俺様も傷付くんだけど。まぁ嫌なのもわかるけど頼んだよ。」

「?何のお話ですか?」

話の意図がつかめず疑問を口にすると佐助がこちらを向き、疲れを見せながら笑う。

「はぁ〜俺様もできることならこんなこと言いにくるんじゃなくて、茜ちゃんに会いに来たかったよ…」
「用が済んだならさっさと帰れ、この色魔めが。」
「よく分かりませんが、疲れているようですしご自愛くださいね。」
「……俺様いっそのこと毛利に仕えようかな…」
「貴様のような色魔はいらぬわ。」

そう元就が言うと、彼が不機嫌なのを悟ったのか、それじゃあまたね、と言うと佐助は部屋から消えた。

「何かあるのですか?」
「ふん、未来から来たなどと世迷い言をのたまう"天女"が来るらしい。」
「未来から、にございますか?というか、この城にいらっしゃるので?」
「そうだ。できることならそのような輩をこの城に入れたくないが、あの鬼と独眼竜、虎若子をたらしこんでいるらしい。」

相当気に食わないのだろう、苦虫を潰したような表情を浮かべる元就に茜も苦笑いを浮かべる。

「まぁ、それは凄いといいますか…。でも未来からだなんて気になりますね。」
「ふん、どうせただの女狐であろう。早々に追い出してくれる。それに――」

元就はそう言うと、茜を自分の近くに呼ぶ。

「茜は我のことだけ考えておればよいのだ。」
「…ふふ、かしこまりましたわ。」

茜が返事をするが早いか、元就は彼女を腕の中に閉じ込めた。



「元就様、真田幸村殿、伊達政宗殿、長曽我部元親殿ならびに猿飛佐助殿、片倉小十郎殿――そして、天女様が参られました。」

そう告げる家臣に元就は鼻をならす。

「とりあえず、此処へ参らせよ。」

元就がそう返すと先程の家臣は恭しく頭を下げ、部屋を出た。

「私も同室しても宜しいのでしょうか?」

仮にも、妻という立場であるため茜は不安げにそう尋ねた。

「構わぬ。ここは、我の城よ。それに、」

元就は茜の手をそっと握る。

「得体のしれぬ"天女"が来ると言うのに、そなたを我の目の届かぬ所に置いておくなど、できぬ。」

本心を言えば、茜と少しでも長く共に居たいだけなのだが勿論口には出さない。

「元就様、」

茜が頬を仄かに染め、こちらを見つめる。元就は彼女を抱き締めようと腕を伸ばす。が、

どたどたどたっ

「ここに毛利殿がいらっしゃるのか?!」
「honey、毛利は怖いからな、俺に抱きついててもいいんだぜ?」
「な、政宗!抜け駆けすんな!」
「ふ、二人とも落ち着いてよぅ!」

外から騒がしい足音と声がして、元就は渋々腕を引っ込める。

「元就様、お連れいたしました。」
「(間の悪い者共め…)入れ。」

その元就の言葉に幸村を筆頭に皆入ってくる。

「毛利殿!お久しぶりでござる!」

そして、不思議な色合いの容姿をした女も。

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