どんな君でも
「うあー、ヤバいぃいい!」
「どしたんや、急に。」

私がそう声をあげるととなりにいた謙也がびくりとしてから、こちらを向いた。相変わらずヘタレてる。

「うっさい、へたれー。うあーどうしよ。」
「ちょ、俺心配したのにひどない?!てか、ほんまどしたん?」
「…け…たの、」
「は?」
「日焼けしたの!ううー日焼け止めきかないじゃん!」

そうなのだ、せっかく日焼け止めを5月から塗りたくっていたというのに、みごとに焼けたのだ、ちくしょう。

「なんや、そんなことかいな。」
「へたれのくせにえらそーにっ!どうせ運動部はやけてなんぼなんだから、この気持ちはわかんないよ!」
「さっきからえらい辛辣やな。泣きそうやわ…。」

とりあえず私は謙也にイライラをぶつける。だって謙也だし。

「てか、俺からしたら十分白いで?」
「そんな慰めいらないもん、ばかー」
「ちょ、自分関西人に馬鹿はあかんて!せめてあほにしてくれや!」
「ばかばかばーか。」
「ひどっ!……てか、見てみいや。」

謙也は私の手をとり、制服の袖ををまくりあげて自分の腕と並べた。

「こんないちゃうねんで?俺はもっとやけてもええ思うけどなぁ。てかお前ほっそ!」

確かに謙也の腕と比べると、白い。そして何だか握られた手首が妙に恥ずかしい。

「謙也は運動部じゃん!それに、日焼けは将来的にシミとかになっちゃうんだよ!嫌じゃん!」

おばさんになって顔シミだらけとかいやじゃん!変な気恥ずかしさを紛らわすように私はまくしたてた。

「そういうもんか?」

謙也はいまだに理解できない、というような顔をしている。

「そうだよ!日焼けは女の子の敵なんだから!」

私がそう声を張ると、謙也がじっとこっちを見つめてきた。

「何?」
「んー別に俺は茜がシミだらけでも、愛せる自信あるで?」
「は…?」
「やから安心して日焼けせぇっちゅうこっちゃ。」

謙也はそう言うと、ちゅ、と私の日焼けのせいで少し皮が剥けた鼻にキスを落とし、悪戯に笑った。

「〜〜〜っあほ!」

でも、日焼けも悪くないかも、なんて思った私はもっとあほだ。

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………あれ、甘いってなんだっけ?どうやら私の中から甘さが裸足で逃げ出しているようです(`∵)キリイ
夕星さま、企画参加ありがとうございました!
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