「涼太、手紙よ。」
部屋でアルバムを見ていると、お袋が部屋の戸をノックして、中に入って来ながらそう言った。
そして俺に手渡すとすぐに部屋を出ていった。
「手紙?」
一体誰が手紙なんて、と思って受け取り、封筒を裏返して差出人の名前を見た。
「、」
そこには、俺が好きだったあの綺麗な字で書かれた美歌の名前があって。
俺は震える手で、封を開けた。
涼太へ
この手紙を読んでいるということは私はもういないということですね。
なーんて、ドラマっぽく始めてみたけどらしくないので普通に書きます!
私ね?すっごく幸せだったよ。不謹慎だけど、涼太が心配そうな顔で毎日お見舞いに来てくれる度に愛感じてた。
そりゃあもう治療の苦しさなんてどっかいっちゃうぐらいね!
ほんとは私も黄瀬美歌になるつもり満々だったんだけど、あまりにも私と涼太がらぶらぶ過ぎて神様が焼きもち妬いちゃったみたい。
だから先にお説教を受けてきます!
ねぇ、涼太。涼太は私と出逢ったこと後悔してる?
私は涼太と出逢ったこと後悔なんて少しもしてないよ。
だってなんてことない毎日が不思議なくらい幸せで、輝いてたから。
だからね、私に似た誰かと幸せになってくださいとはまだまだ言えそうにないけど。
むしろずっと言えないかもだけど。
それでも涼太には幸せになって欲しいな。
ていうか、私より幸せにならずにこっちに来ちゃったら追い返しちゃうからね!
私はかなり幸せだったから相当涼太も幸せにならなきゃ許してなんてあげないよ!
涼太。本当にありがとう。
次に会った時は、一緒にバスケしようね!
それで来世こそは黄瀬美歌にしてください!笑
愛してるよ、また会おう!
美歌
視界が歪む。
美歌、美歌美歌美歌。
まだまだ君を思い出になんて出来ないけど、きっとそれこそ一生無理かもしれないけど、それでも、少しは前に進めそうだよ。
だってこの手紙の全てが、こんなにも俺に幸せになれと訴えているから。
俺も出逢ったことを後悔なんて少しもしてない。
今でも、愛してる。
だからもし俺がとびきり幸せな人生を送ってそっちにいった時は、俺の大好きな笑顔でよく頑張ったね、って言って笑って。そして思いきり抱き締めさせて。
ずっと愛してる、俺の最初で最後の最愛の君を。
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