黄瀬くんが笑わなくなったらしい。その上モデルもやめたらしい 。黄瀬くんクラスもどこか元気がないように見えるらしい。

これは全て人から聞いた話だ。何故なら黄瀬くんは部活にも来ていないから。

赤司くんは何も言わないけれどどこか元気がないし、部活の空気もどこかどんよりとしている。
いつもいじられてはいたけれど、やはり彼はムードメーカーだったから。

ボクはそんな部活の空気が嫌で、黄瀬くんを探して話してみようと決めた。


「黄瀬くん、こんなところで何をしてるんですか。」

ボクは中庭のベンチに寝ころがる黄瀬くんに声をかけた。

「ん?黒子っちじゃないっすか。」

黒子っちから話し掛けてくるなんて、珍しいっすね、と黄瀬くんは笑った。

「(…なんだ、笑うじゃないですか。)部活にも出ないでなにしてるんですか。」

ボクは笑ったことに少し安心して、何時ものように黄瀬くんに話し掛けた。

「あは、赤司っち怒ってました?」

「いえ、なにも。」

「ははっ赤司っちはこんなときだけ優しいんすね。」

赤司くんが優しい?どういう意味だろうか。けれどボクにはまず聞きたいことがあったので、そこには触れなかった。

「何かあったんですか?」

なかなか本題に入らない彼にボクがそう問いかけると、黄瀬くんは笑った。

「死んじゃったんすよ、美歌。」


「、美歌さんが、」

存在は知っている。黄瀬くんがべた惚れだった彼女さんだ。確か突然病気にかかり、3カ月ほど前から入院していたはずだ。

黄瀬くんがバスケ以外ではじめて本気になったんだ、と幸せそうに笑って彼女とのプリクラを見せてくれた時にはボクも、皆も驚いていた。

彼女が病気になって入院したての頃はよく部活をサボッてお見舞いに行っていて、赤司くんによく怒られていた。
(その後何故か彼女さんから赤司くんに謝罪の手紙が届き、黄瀬くんも部活をサボらなくなって赤司くんの怒りはなんとか収まった。)

「俺を置いてっちゃったんすよ、美歌。」

そう言ってもう一度笑った黄瀬君は笑っていたけど、泣いていた。

もしかすると、涙はもう枯れてしまったのかもしれない、なんてボクは漠然と思った。

よく見れば隈が酷いし、目もとも赤い。それに肌だってモデルをしていた時とは程遠いし、髪だってぼさぼさしている。

そんな黄瀬くんを見てボクは何も言うことが出来なかった。


(あぁ、もしかしたら黄瀬くんは美歌さんがいたからあんなに輝いていたんじゃないだろうか。)

もし、そうだとしたら神様は、なんて、酷い。
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