「はーい、クールダウン終わったみたいだから、私からお話がありまーす。」
タオルで汗を拭いたり、ドリンクを飲んだりしている面々に雪がそう声をかける。
「まぁ、ゆーちゃんから頼まれてたことなんだけど、」
そう前置きして話が始まった。
「まず、桑原君は持久力は凄いよー。でももうちょっと体幹意識した方が楽になると思う。」
重心がね、こう、真っ直ぐなるように意識してね!そう言われたジャッカルは体幹、と呟いた。確かに今まで意識したことも無かったかもしれない。
「で、真田君と柳生君はもっと柔軟が必要かな。いらない所に力入っちゃってるから柔軟頑張れば、タイムは1、2分は違ってくると思うよ。」
「うむ、柔軟か…。確かに最近少し疎かだったな。」
「私も言われてみれば…。」
そして、全てのメンバーの改善点をすらすらとあげていく。各自それぞれ指摘された点は思い当たることばかりだ。走りを見ただけでそんなに分かるのか、と思ってしまうぐらい的確な分析である。
「ありがとう、雪。こんなに君が凄いだなんて思ってなかったよ。」
頼んだはずの幸村も驚いてついそんな言葉を発する。
「あはは、これくらいさっちゃんに比べたら大したことないよー。」
実際、帝光中バスケ部からすれば桃井と同じかそれ以上助かっているのだが、ここに彼らは1人もいないため誰も訂正しない。
「雪が本当の立海生なら良かったのう。」
仁王は後ろから雪に被さりながらそう呟くように言う。
「にーくん、重いぃー」
「そっすねー。俺も雪先輩にずっといて欲しいっす!」
「私もですわ!たった6ヶ月なんて少なすぎます!」
赤也と麗奈もすかさず同意を示す。雪の仁王への不満は聞き流されたようだ。
「ふふ、皆こう言ってるしいっそのこと転校でもしてくるかい?」
幸村も柔かく微笑みながらそう誘う。
「んー…すっごく魅力的なお誘いだなぁ。考えておくね!」
雪は無難にそう返した。
「いい返事を期待してるよ。」
幸村も彼女にそう返したが、何となく来てはくれないだろう、なんていう予感がしていた。
「さ、次はラリーだよ。皆コートに入って!」
しかしそんな予感を打ち払うように幸村は少し首を左右に振り、そう声を上げた。