「柳くん、柳生くん、真田くんおはよう!起きるの早いねー」
朝、早起きをしてご飯を作っていると、3人一緒に食堂に入ってきた。
「おはようございます。」
「おはよう。」
「おはよう。もしかしたら起きれていないのかと思っていたが、起きれていたのだな。」
挨拶を返すと共に、柳が少しからかうような口調でそう言う。
「ふっふっふっ!秘密兵器があったからね!」
「秘密兵器?」
真田が不思議そうに聞いてくる。
「うん!じゃーんっ!」
そう言うと、料理を作っていた手を一旦止めてポケットに手を突っ込み何かを引き出し、3人に見せる。
3人の視線は自然と雪の指先に集まる。
「フリスク、ですか?」
「うん!すっごい辛いんだよ!」
「そのような物に頼らないと起きれないなど、たるんどる!」
「えぇ?!起きれたんだしいいじゃーん。」
真田のその叱咤に雪は朝ごはんを作る手を止めずに、拗ねたように唇を尖らせる。
「まぁ、私たちのご飯を作ってくださっているのですから。」
柳生も彼女の肩を持つようにそう言うと、真田も一理あると思ったのか怒りはしなくなった。
「一粒、貰えないか?」
雪を起こすぐらいのフリスクの味に興味があるのか、柳がそう言う。
「別にいいけど、ゆーくんが食べた時喋れなくなっちゃったよ?」
「幸村くんが?」
柳生は不思議そうだ。柳と真田も驚いている。
「うん!スッゴく辛いんだからね。」
「幸村がそうなるぐらいなのだから、相当なのだな。」
真田が興味深そうに雪の手元のフリスクを眺める。
「それでもいる?」
「…………貰おう。」
柳は相当辛いとはわかっていても、やはりそこはデータマンとしてのプライドなのか何なのか、少し渋るもそう答えた。
「ん、了解。」
雪は柳の出された手のひらの上にコロン、と一粒フリスクを出した。見た感じはなんてことのない普通のフリスクだ。
柳と、何故か柳生と真田がごくりと唾を呑み込んだ。
ぱくり、柳がゆっくりと一粒口に含んだ。
「………!」
がりっと噛む音がしたかと思ったら、柳の顔色が変わった。
「ね?辛いでしょ?」
「〜〜〜っ」
雪はそう言ってけらけら笑うが、柳は想像以上に舌を刺激する辛味に言葉を発する事が出来ない。
柳生と真田は何のへんてつもないフリスクのケースを少し恐ろしく思うと同時に貰わなくて良かった、とこっそり安堵の息を吐いていた。
「柳生くんと真田くんも食べてみる?」
が、突然のその振りに咄嗟に首をブンブンと横に振った。
雪はそんな2人を見ていたずらっ子のように笑った。