「雪様っ!」
女の子たちと別れて部活に向かうと、麗奈が一目散に駆けてきた。
「遅れちゃってごめんね、れーちゃん。」
「いえ、それより大丈夫でしたか?私何だか嫌な予感がしていたのですけれど…」
麗奈が不安げな顔で雪にそう問いかけていると、丁度休憩中だったらしく幸村たちがやってきた。
「あぁ、雪来たんだね。もしかして、呼び出しだったの?」
幸村も遅刻の原因に薄々勘づいていたのか、心配そうにそう尋ねてきた。
「うん、まあそうなのかな?」
雪は先ほどのことを思いだし、なんともいえない表情を作った。
「おまっ大丈夫だったのかよぃ?!」
「先輩!先輩は俺が守るんで、何でも言ってくださいね?!」
そんな表情に勘違いしたのか丸井と切原がそう詰め寄る。
「ん?なんの話?や、まぁありがと?」
後ろで不機嫌な顔をしていた仁王が会話のずれに気づいた。
「皆、雪が苛められたんじゃないかって心配しとるんぜよ。」
「苛め?何で?」
仁王の言葉にきょとりとした彼女に麗奈が詰め寄った。
「だって女の子たちに呼び出されたのでしょう?!」
「え?うん。初めてでちょっとびっくりしちゃったけど。」
「びっくり?」
雪の何だかずれた返答に幸村が不思議そうに彼女の言葉を復唱した。
「うん、ファンクラブ作りたい、なんて初めて言われたよ〜。」
「………。」
「………。」
「………。」
「「………はぁ?」」
皆が呆気にとられて沈黙するなかで丸井と切原はそう声を上げた。
「え?女子に呼び出されたのって…?」
「ん、何か仲良くなりたかったらしいよ〜。」
「………お前ほんと何なんだよい。」
丸井は何だか疲れきってる。
「「………ふふ、ふふふふっ」」
すると、黙っていた幸村と麗奈が笑い出した。
「ファンクラブ、盲点だったね。ふふふ、」
「盲点でしたわ!何故作らなかったのでしょう!」
幸村はなんだか楽しそうだし、麗奈は頭を抱えている。
「どうしたんだろうね、二人とも。」
丸井と切原は雪のそんな言葉になんともいえない笑顔を浮かべた。「ん?にーくん?」
すると、仁王が後ろからのし掛かってきた。
「なんもなくて良かったぜよ、」
「……ふふ、何かありがとね。」
と、和んだところで切原が声をあげた。
「あー仁王先輩ずるいっすよ!」
そしてそんな切原の声に麗奈と幸村が2人の方へ向いた。
「げ、」
「ふふ、仁王?なにしてるの?」
「どうやら死にたいようですわね?」
「ただのスキンシップぜよ、スキンシップ。のう、雪」
「え、うん。」
「………ふふふ、」
「………うふふふ、」
訳も分からず雪が頷くと、幸村と麗奈が笑い出した。正直すごく怖い。だって切原と丸井が手を取り合ってガタガタ震えている。が、仁王はそ知らぬ顔で練習に戻った。
後には怯える二人と怖い二人、そして雪が残った。
「さ、私も仕事、仕事!」